東大生の「公務員離れ」
若手優秀層に不人気な職場に

 公務員の報酬水準がいかにあるべきかは、古くから論じられていて、なかなかスッキリした結論の出ない難しい問題だ。

 今回の報告資料を見ると、人事院が20代から30代の若手人材において公務員離れとも呼ぶべき傾向に強い危機感を持っていることがうかがわれる。

 ここ十数年くらいの傾向だが、上級職を目指すような学業優秀層が、職場として国家公務員を選ばなくなっている。端的に分かる現象は、上級職公務員の採用者の中の東京大学卒業者の比率が下落していることだ。

 東大の卒業生が公務員に向いているとも限らないし、出身校や性別などが多様化するのは職場の一般論として好ましいことだ。しかし、事実上どこにでも就職できるような競争力とその背景にある問題処理能力を持った人材が集まらなくなることには損失がある。この間、組織としての官庁が得たものはあったけれども、重要な何かを失ったことも間違いあるまい。

 職場としての公務員が不人気になったことの影響があるのだろう。東大では、学部に進む際の進路振り分けで法学部の人気が低下しているという。同学部のかつての威光を思うと隔世の感がある。

 加えて、国家公務員にあっては、20代後半から30代半ばにかけての年代で離職者が増えていて、過去(人事院の文書では10年前)との比較で、この年代の人数比率が大きく低下している。

 かつてコンサルティング会社に在職したこともあり企業の人事に詳しい川本総裁は、官僚組織が「最優秀層の学生が集まらなくなって、若手の離職者が増えている会社」のような、危機的な状況だとみているはずだ。企業なら、大規模な人事コンサルティングプロジェクトが必要な状況だ。

 今回の勧告でも、20代後半から30代前半にかけての公務員の処遇が民間企業と比べて劣後することを解決しようとする努力の跡があるのだが、全体の年代別の給与構造を変えずにこの年代の条件アップを試みることには限界がある。

 20代後半から30代前半が、お金を使って「人生を楽しむ能力」が最も高い年代に当たるとの意見があるくらいで(例えば書籍『DIE WITH ZERO』を参照)、この年代で十分お金が使えない給与カーブは痛い。