北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の3度目の核実験を受け、国連安全保障理事会が制裁強化に向け、決議案をめぐる協議を行っている。ただし、今のところ協議に進展が見られず、3月上旬以降の採択となりそうなのが現状だ。そうしたなか、ブルッキングス研究所シニアフェロー、マイケル・オハンロン氏は、もし北朝鮮にさらなる制裁を加えるのならば、「暫定的なもの」にするべきだと主張する。国際世論は強力な内容の制裁決議を望む声が多いが、なぜ「暫定的」な制裁に留めるべきなのだろうか。(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)
(Michael O'Hanlon)
ブルッキングス研究所のシニアフェロー、および21世紀防衛イニシャティブ外交政策研究のディレクター。専門はアメリカの防衛戦略、軍事政策,外交政策。プリンストン大学、ジョンズホプキンス大学で教壇に立つほか、英国国際戦略研究所(IISS)メンバーやCIAの外部諮問委員も務める。著書に『Bending History: Barack Obama's Foreign Policy』(共著)、『The Wounded Giant: America's Armed Forces in an Age of Austerity』などがある。2003年に出版された『Crisis on the Korean Peninsula』(マイク・モチヅキとの共著)では、北朝鮮との前進的関係確立を説いた。
――北朝鮮がこれまで行ってきた核開発やミサイル発射実験は、核開発停止を望む西側諸国との交渉で有利な条件を引き出すための手段と見なされてきた。だが、高濃縮ウランを使用した今回の核実験によって、北朝鮮は別の意図を持つのではないかとも見られている。核実験の目的は何だと考えるか。
わからないことは多い。まず実際に高濃縮ウランを用いていたかどうかは、まだはっきりしていない。もしそうだったとしたら、北朝鮮は核を量産する能力があり、場合によっては諸外国へ売れることを示して西側諸国を不安に陥れようとしたのだろう。あるいは、ちゃんと機能する核遠心分離機を有しているが、その在処を隠し続けることができることをアピールしたかったのかもしれない。それによって、米朝枠組み合意のような新しい処遇を提示するよう、西側諸国を誘導しようとしているのだ。または、国内の強硬派が核戦闘能力をまだ十分に見せつけていないと主張し、もう1回(小規模な核弾頭による)核実験が必要だと考えたのかもしれない。
――金正恩体制下の核戦略は、父親の金正日時代とはどう違っているか。
まだ違いがわかるところまでは来ていない。だが、若い金正恩が現在のアプローチを再考することを望んでいる。祖父の金日成も、かなり時間がかかったものの、最終的には当初の姿勢をある程度は修正した。