日本再浮上&AIで激変! 5年後のシン・業界地図#11Photo:PIXTA

特集『日本再浮上&AIで激変! 5年後のシン・業界地図』(全16回)の#11では、自動車業界の気鋭アナリストとして知られるナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表アナリストが、大変革期に直面する車業界の5年後を大展望。脱炭素や電動化、相次ぐ異業種プレーヤーの参入など、かつてない大波が到来する中で、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車をはじめとした日系大手メーカーの生存戦略を分析する。

かつてない大変革が
自動車業界に襲来

 自動車産業は、大きな曲がり角を迎えている。周知の通り、車の動力源や本体の構造が、内燃機関から電気やモーターへシフトしている。さらに、重要なのが、ビジネスモデル自体が大変化を遂げているということだ。

 従来のような「売り切り型」から、「リカーリング」と呼ばれるサブスクモデルへの移行が加速している。加えて、利用者の目線でも、購入して駐車場に止める「所有型」から、必要なときだけ使う「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」へ転換が進む。

 かつてガラケーがスマホに変わったり、CDがストリーミングサービスに置き換わったりしたほどのとてつもない大変革、いわゆる「デジタル革命」が自動車業界を襲っているのだ。

 足元に目を転じれば、日系メーカー各社の業績はむしろ堅調である。理由として、自国市場の変革が遅れていることが挙げられる。依然ハイブリッド車のような技術が有効であり、既存のビジネスモデルでも稼げる構造となっている。そこへ大幅な円安が加わり、海外では円ベースの売値が高くなるだけに利益を確保しやすい。

 ただし、自動車業界の4~5年先には、大きな変曲点が訪れると考えている。各社が対応を進めなければ、構造変化に押しつぶされるリスクが高まるだろう。

 留意したいのは、一連の変革が必ずしも技術革新によって生じているわけではないこと。米国や中国、欧州などのエネルギー・産業政策や対立的な構図など、自動車業界の進化のスピードは、地政学的な要因に大きな影響を受けるようになっている。では目下、最大の業界リスクとは何か。

次ページ以降では、業界の気鋭アナリストとして知られるナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表アナリストが、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車など日系メーカー6社に関し、今後5年の売上高や営業利益、小売り販売台数の見通しを明らかに。自動車業界に襲来する目下「最大のリスク」や、米アップルをはじめとした異業種参入が相次ぐ5年後の未来シナリオを大展望する。