山川出版社は歴史の教科書を作っている出版社ですから、確かな情報と豊富な資料が充実している内容です。アナウンサーが朗読しているCD-ROM付の朗読版は、スマホにダウンロードして通勤中に聴くこともできるので、スキマ時間の有効活用にピッタリです。
歴史の流れをインターネットで検索して調べようとすると気が遠くなりそうですが、コンパクトでわかりやすいこの本が1冊あれば、基本は押さえられるでしょう。
本は時系列で構成されていて、古代から現代まで4部構成になっています。それ以外に、「特集」「同時代の世界」「地域の視点」という全体共通テーマの企画ページも盛り込まれています。
特集のひとつ「病気の世界史」では、天然痘、ペスト、マラリア、チフス、コレラ、梅毒、結核、インフルエンザまで、人類が感染症と闘ってきた歴史が、写真や図版を通してリアルに伝わってきます。
もともと高校生向けに編集された教科書ですから、学生時代に使っていた人もいるかもしれません。受験勉強のときにはわからなかったかもしれませんが、社会人になってから読み直すと、この本に詰まっている情報が質量ともにいかに高いレベルかわかると思います。
私は、大学受験の科目で世界史を選択したので、10代のうちに世界史の知識を身につけて本当によかったと思っています。中東はなぜこんなにも争いが続いているのか? 欧米が世界で優位に立っているのはなぜだろう? という疑問も、世界史を知っているとその背景がわかります。現代を理解するための必須科目は、やはり世界史なのです。
旅で理解を深める「日本史」
日本史の面白さは、ひと言でいうなら、細かいところまで日本人のアイデンティティに関わる学問であることです。アイデンティティという言葉は、自己同一性などと訳されますが、自分は自分であると自己定義する、いわば存在証明のこと。国、組織、社会などへの帰属意識も関係しています。
日本史も、『山川 詳説日本史図録』で写真や図版を見て、資料から全体をつかむとわかりやすいのは世界史と同じです。そのうえで、歴史上の人物で面白そうな人がいたら、その人物を描いた本やドラマから歴史の世界に入ってみるといいでしょう。
日本史は、英雄たちがなぜそのような決断をしたのか、さまざまな解釈ができるところも魅力です。たとえば、本能寺の変でなぜ織田家重臣の明智光秀が織田信長を討ったのか? という謎については、今でもドラマ、映画、小説などでさまざまな角度から描かれています。
NHK大河ドラマの『麒麟がくる』も謎の多い明智光秀が主人公でしたが、史実にもとづいたうえで非常に細かく人物像を描き出していて話題になりました。日本史が好きな人は、大河ドラマから入る人も多いので、毎週日曜日の夜は大河ドラマの時間と決めてもいいと思います。