電気自動車(EV)とEV充電器はまさにクルマの両輪の関係だ。国は2030年までの公共用EV充電器設置目標を従来のほぼ2倍に当たる30万口とする案を8月に示しており、設置事業の業界は新規参入が相次いでいる。大手エネルギー会社などがしのぎを削る充電インフラ市場で、電通出身のトップが率いるベンチャー、プラゴが存在感を高めている。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、同社の社長に大手に対抗する独自戦略について聞いた。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
2025年までに1万基を目指すが
「稼働率にこそフルコミットメント」
――ざっくりとしたビジネスモデルから教えてください。
われわれが設置費用などを負担し、充電器のアセットを持ったまま運営もやらせてもらう。あるいは充電器を売り切った上で、弊社のサービスを使ってもらう。いずれにせよEV充電器はアプリ「Myプラゴ」でつながります。
――設置基数は?
非公開です。2025年までに累計1万基の設置を目指します(ダイヤモンド編集部注:国による公共用EV充電器の設置目標数の単位が「基→口」と8月下旬に変わったため、業界内で単位が混在している。急速充電器は近年、1基で複数口あるものが増加傾向)。
問題提起したいのが、設置基数ばかりが注目されることです。実は、21年に充電器(国内の総基数)は減りました。理由はそれまでの補助金ばらまきでバーンと基数を伸ばしたものの、結局使われないから撤去、あるいは、保守メンテナンスや電気代が施設側負担ばかりになっていて施設として維持できなくなくなったのです。これを繰り返すんですかと。基数を追うことも大事ですが、立てっぱなしになっていませんかと。
プラゴは25年に1万基と言っていますが、数ばかりを追うのではなく、稼働率にフルコミットしていきます。結果、設置側もわれわれもビジネスとして回っていきます。
――設置先の特徴を教えてください。
「補助金を使って0円でまずは設置していきましょう」みたいなローラー的な営業活動は、それを否定するものではないですが、われわれはやっていません。中長期でご一緒に充電サービスを作っていくパートナー企業としっかり取り組んでいく。そこが(EV充電インフラ設置事業)他社とちょっと違うところかもしれません。
EVインフラ市場には、大手電力会社からベンチャーまで参入が相次ぎ、乱戦模様となっている(『EV充電市場に東電、中部電、ENEOSの超大手から伊藤ハム御曹司まで参入!最新勢力図初公開』参照)。次ページでは、EVインフラ市場が過熱する中で、大川氏がニトリやヤマダデンキなどと組んで進める独自戦略について明らかにする。