職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
問題を2つに分けましょう
お客さまからの苦情への対応は、なかなか難しいですよね。
もし、あなたの部下が「上を出せ」と言われた際に、上司であるあなたがいかに責任者としてクロージングに導くか。
今回は、そのノウハウをお伝えします。
まずやるべきなのは、「相手が抱える2つの問題を解決する」という方法です。
苦言を呈するお客さまは、ただ文句を言っているわけではなく、「現実の問題」と「感情の問題」を抱えている、と捉えましょう。
1つ目の「現実の問題」というのは、「実際に起きている問題のこと」です。
たとえば、購入したばかりのバッグの取っ手が壊れてしまって、そのことで苦情が来たとしましょう。
その場合、「現実の問題」は、「取っ手が壊れた」ということになります。
ここは誰でもわかることだと思います。
そして、2つ目の「感情の問題」というのが、「『現実の問題』を取り巻く相手の気持ちのこと」です。
たとえば、そのバッグが、大事な商談やデートに向かう途中で壊れたとしたら、「焦った」「困った」という感情が想像できます。
ここで相手のことを想像することが試されるのです。
対応の「順番」がカギ
さて、苦情対応でもっともやりがちな失敗が、「現実の問題」だけに対応してしまうというやり方です。
「感情の問題」のことをまったく考えず、
「申し訳ございませんでした。では、取っ手を修理しますので現物を送っていただけますか。」
と、「現実の問題」の解決に急いでしまう対応です。
これをすると、「どれだけ迷惑をかけたと思っているのか!」と、さらに怒りに火を注ぐことになります。
多くの場合、ここで、「お前じゃダメだ。上を出せ!」につながるのです。
きちんと苦情対応ができる人は、「感情の問題」を先に解決するということをやっています。
「出先で壊れて、お困りになったのではないでしょうか?」
「大切な場で、たいへんご迷惑をおかけしました。申し訳ございません」
というように、「現実の問題」を解決する前に、「感情の問題」に対して丁寧にお詫びするようにしてください。
すると、「怒っている気持ちを理解してくれた」という実感がわき、やがて相手の心の壁が少しずつ低くなっていきます。
そして相手も聞く耳を持つことができ、次の「現実の問題」の対応や提案へと入っていきやすくなるのです。
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。