いきなり!ステーキPhoto:Diamond

新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は王将フードサービス、コメダホールディングスなどの「専門飲食店」(中華料理・カフェ・定食など)業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

「いきなり!ステーキ」運営元が
外食5社で「独り負け」の減収&下方修正

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の「専門飲食店」(中華料理・カフェ・定食など)業界5社。対象期間は2023年2~6月の四半期(コメダホールディングスとハイデイ日高は23年3~5月期、その他3社は23年4~6月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・王将フードサービス
 増収率:8.9%(四半期の売上高246億円)
・コメダホールディングス
 増収率:16.7%(四半期の売上収益105億円)
・ハイデイ日高
 増収率:37.4%(四半期の売上高117億円)
・大戸屋ホールディングス
 増収率:21.3%(四半期の売上高66億円)
・ペッパーフードサービス
 増収率:マイナス0.1%(四半期の売上高37億円)

 外食5社では、「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービス(FS)がわずかにマイナスとなった。一方、ペッパーFSを除く4社の増収率は好調に推移した。

  新型コロナウイルス感染拡大に伴う大減収からの反動増や、原材料価格の高騰を踏まえた値上げの影響には注意が必要だが、これら4社は着実に復調しているようだ。

 唯一の減収となったペッパーFSにとって、23年4~6月期は23年12月期第2四半期に当たる。第1四半期の増収率がプラスで着地していたこともあり、上期累計(23年1~6月期)の売上高はわずかながらプラスを死守した。

 だが、利益面では依然として苦戦を強いられており、ペッパーFSの営業損益・純損益(上期累計)はいずれも赤字だ。今回分析対象とした専門飲食店5社の中で、赤字を計上している企業はペッパーFSのみである。同社の決算短信には、経営危機に陥っていることを示す「疑義注記」が引き続き記されている。

 さらに、ペッパーFSは23年12月期の通期業績予想を下方修正している。他社とは決算期が異なるため単純比較はできないが、現時点で通期業績予想を引き下げている企業も5社の中でペッパーFSだけだ。

 ペッパーFSが運営するいきなり!ステーキは、上質な肉を「低価格・高回転率」で提供するビジネスモデルで人気を博したが、過剰な出店があだとなり急失速。22年8月には業績不振の責任を取って一瀬邦夫氏が社長を辞任し、後任として長男の一瀬健作氏が副社長から昇格した。

 現在は新社長の下で、不採算店舗の閉店をはじめとする構造改革を進めている段階だ。

 苦境脱却を目指すペッパーFSの決算資料を見てみると、実はいきなり!ステーキの運営事業は復調しつつあり、赤字の要因は他にあることが分かる。それは何なのか――。

 次ページでは各社の増収率の推移を紹介するとともに、ペッパーフードサービスの業績について詳しく解説する。