首相補佐官に異例の人物を抜擢
狙いは組合か、国民民主党か

 今回の改造人事の中で、一風変わった注目を浴びた人事があった。5人の首相補佐官の一人に、元国民民主党副代表で、現在は出身母体であるパナソニックの労働組合に戻っていた矢田稚子氏が起用されたことだ。矢田氏の担当は、岸田政権において経済政策上の最大の課題ともいえる「賃金・雇用」だ。

 今や首相官邸は、ある意味では国会よりも自民党内よりも政策が実質的に決まる政権の中枢だ。この中に取り込むのだから、重要人事だ。

 矢田氏は、政治経験と労働組合経験の両方を持つが、一民間人の立場であった。政権としては「能力と経験を買った」と言えばどうにでも説明がつくが、岸田政権が、矢田氏の起用を通じて産業別の労働組合(電機労連)とコネクションを持とうとしているのか、あるいは国民民主党との距離を近づけようとしているのか、その意図が注目されている。

 特に政治的には、国民民主党を近い将来に連立政権へ取り込むための布石ではないかとの憶測を呼んでいる。

 国民民主党は、政府の2022年度予算案に賛成した過去を持つ(23年度予算には反対)。また、先の代表選挙では、与党との政策面での連携に積極的な玉城雄一郎代表が、野党としての立場を重んじる前原誠司氏を抑えて代表続投を勝ち取ったところでもある。

 国民民主党の連立政権入りはあり得るのだろうか?