「ドリル優子」のみそぎは
完了にはほど遠い…

 小渕氏の起用は、先般逝去された故・青木幹雄元幹事長や、今も隠然たる影響力を持つ森喜朗元首相らの「推し」に応えた。だが、小渕氏は党内ではすこぶる評判がいいらしいが、過去の「ドリル問題」があって答弁の矢面に立つ場面の多い閣僚には起用できなかった。就任時の国民の反応を見ても「ドリル優子」の印象はいまだに強烈で、「みそぎ完了」にはほど遠いことがうかがえた。

 ただし、小渕氏と同派閥の茂木氏への牽制(けんせい)にはなったのかもしれない。「あなたには、人気と人望がない」というメッセージだ。

 なお、プライベートな問題が話題になって去就が注目された内閣府の官房副長官だった木原誠二氏は、党の幹事長代理と政調会長特別補佐を兼務するという特異なポストで処遇する方向で調整しているという報道があった。実現すれば、表に出ない形で政策に関わることになる。

 木原氏は岸田内閣の重要政策のほとんどを実質的に仕切っていた。しかし、彼の代わりをこなせる「使える人材」が他にいないということは、日本の政治家集団の人材払底を象徴している。

 また、今回の人事では、閣僚に女性を5人起用したものの、副大臣・政務官54人の中に女性が一人もいないという、端的に言って「大ちょんぼ」をやらかした。そもそも女性議員が少ないということはあっても、これでは次の閣僚候補が育たない。

 また、将来の問題以前に、このラインナップではいかにもまずいと気が付いて岸田首相に進言できる側近が、政治家にも官僚にもいないとは、何とも寒々しい現状だ。

 よし悪しは別として感想を言うと、日本にあって、政治家はこんなに魅力のない職業になってしまったのか、とあらためて思った。