加えて、自民党側から見るとしても、国民民主党が野党勢力の統一を妨げつつ、野党票を分断していることが、実は好都合である。

 労働組合の中央組織である連合が、今や、野党の共闘を阻むことによって、実質的に自民党の有力な応援勢力になっている。国民民主党は、小さくてもその有力な実働部隊だ。連合の芳野友子会長も国民民主党の連立政権入りを否定している。

 また、玉木代表本人に「あなたは、どれくらい大臣になりたいのか?」を聞いたことはないが、連立に加わっても有力大臣になれないなら、小党といえども党の代表として、自民党の中堅議員をはるかに超えるスポットライトを頻繁に浴びながら、11億7300万円に及ぶ政党交付金(23年)の差配をしている方が、政治家としては快適なのではないだろうか。

 方々の関係者の個人の利害までさかのぼって考えると、国民民主党が、少なくとも「今」連立政権入りすることが合理的だとは思えない。

現在の政治システムを作った
小沢一郎氏が犯した「設計ミス」

 政治家それぞれに利害を発生させてインセンティブともブレーキともなっている小選挙区制や政党交付金を中心とする現在の政治システムを作ったのが、小沢一郎氏であることは衆目の一致するところだろう。制度に対する小沢氏の設計意図は、政権交代が容易に可能で、いわゆる金権政治を排することができる、緊張感があってクリーンな政治体制を作ることにあったのではないかと推察する。設計の意図は悪くないと言っておこう。

 しかし、制度設計の前提として政治家が「政権を取る」ことに目的としても手段としてももっと大きな情熱を傾けるであろうと仮定したことが、現実に合っていなかった。

 どうやら、起源は自民党が旧民主党から政権を奪還した辺りにさかのぼる。この時、政権を持つことのメリットを知る自民党は「もう下野するのは嫌だ」と民主党政権の仲間割れを反面教師に結束を固めるのと同時に、党内でも党外でも、ライバルをつぶす行動様式を身に付け始めた。

 そして、選挙を前にした候補者としての政治家が典型的だが、政治家個人を子細に見ると、「政権にチャレンジして冷や飯を食うよりも、協力してポストや選挙に有利な環境を得ることの方が、自分にも自分の仲間にも好都合だ」という利害があることが発見された。