自民党・公明党の対立が表面化し、「連立解消の危機に瀕(ひん)している」という報道が飛び交っている。だが、自公関係を長年ウオッチしてきた筆者は、両党が決別することはないと考えている。自民党が日本維新の会などと連立政権を組む可能性もないだろう。人間関係に例えるならば、自公は“別れられない腐れ縁”だといえる理由を解説する。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
公明党と対立する一方で
維新・国民と関係深める自民党
衆議院選挙の候補者調整を巡って、長く“蜜月”を続けてきた自民党と公明党が激しく対立している。公明党は5月末、東京都の選挙で自民党の候補者を推薦しない方針を決めた。
公明党の強気な姿勢の背景には、同党が抱える苦しい事情がある。これまでの公明党は衆参両院において、議席の多くを比例代表で獲得してきた。だが昨年の参院選では、かつて800万票を誇った比例票が618万票まで落ち込んだ。
また今春の統一地方選では、都道府県議会選挙などで「候補者全員当選」の目標を果たせなかった。公明党が誇ってきた組織力が、明らかに弱体化しているのだ。
次期衆院選では、日本維新の会(以下、維新)が「公明党の現職がいる関西の選挙区で、独自候補の擁立を検討している」という話が伝わってくる。競争環境が厳しさを増す中、公明党は生き残りをかけて、自民党との関係を再構築するために強気に出ていると思われる。
一方で自民党は、政策協議などを通じて維新や国民民主党(以下、国民)との関係を深めつつある。