免税事業者がインボイスに登録すると消費税の納税義務が発生する。消費税の計算方法は三つあるが、どれを選べばいいのか。特集『10月から本番!大混乱必至! インボイス&改正電帳法 最新対策マニュアル』(全16回)の#13では、そのポイントを井ノ上陽一税理士に解説してもらった。(税理士 井ノ上陽一)
インボイス登録で消費税を納税
三つある消費税の計算方法
2023年10月1日から、消費税のインボイス制度(正式名称は、適格請求書等保存方式、以下「インボイス」)が始まります。
巷間でいわれているように、ひとり社長など小規模事業者はインボイスの導入によって、経理の手間が大幅に増えることが予測されます。では、どのように対処していけばいいのでしょうか。
押さえておきたいインボイスのポイントは、次の三つです。
(1)インボイスは任意
(2)インボイスに登録しないと売り上げが減る可能性がある
(3)インボイスに登録すると、消費税を納めなければいけなくなる
全て、ひとり社長に関係してきますので、順を追って見ていきましょう。まず、インボイスは登録してもしなくても問題ありません。登録しなくても罰金が発生するわけではないのです。
次に、インボイスに登録すると登録番号が使えるようになり、法人番号の前に「T」が付きます。23年10月1日以降、インボイスの導入後は、この番号が請求書にないと、お客さまから値段交渉を持ち掛けられる可能性があります。
というのも、インボイスに登録していない事業者から商品やサービスを仕入れると、お客さまの税金が増える可能性があるからです(仕入税額控除ができないため)。値下げされると売り上げが下がりますし、場合によっては取引停止となる可能性もゼロではありません。
ならば、インボイスに登録すればいいかというと、そうではありません。インボイスに登録するとデメリットもあるからです。
それが三つ目で、インボイスに登録すれば消費税を納めなくてはいけなくなります。これまで免税事業者として消費税を納めずに済んでいた方も、登録すれば課税事業者となり、納める税金が消費税分増えることになるのです。
この消費税は計算方法によって変わり、全部で三つあります。そこで次ページでは、課税売上高880万円、経費が550万円(全て消費税の対象)のケースで紹介していきましょう。