訪問販売型の保険代理店に属する保険募集人の報酬体系は特殊であるが故、インボイス制度への対応に苦慮する代理店が続出している。特集『10月から本番!大混乱必至! インボイス&改正電帳法 最新対策マニュアル』(全16回)の#11では、その理由と対策を解説した。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
保険代理店の給与体系は特殊
給与所得と事業所得の2階立て
そもそものインボイス制度の複雑さに加え、業界特有の問題に頭を悩ませているのが、保険代理店業界だ。
訪問販売型の保険代理店に所属する保険募集人は現在、雇用形態となっているが、その報酬体系は特殊だ。給与所得と歩合給である事業所得の2階建ての報酬体系であり、事業所得の方には消費税がかかるからだ。
そこでまずは、お金の流れから見ていこう。保険会社は保険代理店に対し、保険募集というサービスの対価として販売手数料と共に消費税を支払っている。保険代理店はその中から代理店経営にかかるコストを引き、残りを募集人に報酬として支払うが、事業所得に対しては消費税を支払っている。
これまで代理店は、保険会社から受け取った消費税から募集人に支払った消費税を差し引く、いわゆる仕入税額控除を行ってきた。だが、インボイス制度導入後に、課税売上高1000万円以下で免税事業者のままの募集人がいれば、その分は仕入税額控除ができなくなってしまうわけだ。
ましてや事業主と従業員という雇用関係上の手続きだけに、根拠やルールが明確に定まっておらず、解釈上のルール設定を行っているのが現状だ。
とはいえ、仕入税額控除ができなければ、代理店は消費税の二重払いとなってしまう。インボイス制度導入後3年間は、経過措置があるため消費税分の8割控除があるが、その次の3年間は5割控除となり、最終的に経過措置の控除はなくなってしまう。これでは代理店経営が立ち行かない。
理想的なのは、愛知県名古屋市を地盤とする代理店エフピーサポートのように、募集人全員がインボイスの発行事業者に登録することだ。だが、インボイスへの登録は任意のため、様子見する募集人も少なくない。免税事業者を継続する募集人が残るとなれば、代理店としては消費税の二重払いを避けるための方策が必要になってくる。