フェーズによって変化する
「攻めの投資」「守りの投資」

 投資を始めた頃は意識しませんでしたが、年齢によって投資戦略は変わってきます。40代ぐらいまでは資産を作ること、「資産形成」が投資の目的となります。ある程度のリスクを取って資産を作りに行く時期であり、株式運用などが投資の中心となります。一方、50代を過ぎると「資産運用」が投資戦略となります。リスクはあまり取らずに、それまで形成してきた資産を守る必要があり、債券などの割合を増やしていくとよいとされています。

 投資を行う時期によって、目的を達成するためのリスクとリターンのバランスを検討し、株式・債券・現金・不動産など、アセットアロケーション(資産配分)を考えて資産を分散させることが重要です。

 個人がライフサイクルやライフイベントに合わせて投資戦略を変化させていくのと同様に、会社や組織、事業によっても戦略は異なります。スタートアップや新規事業部門など、何もないところから事業を生み出す「0→1」、生まれた事業を検証しながらビジネスとして成立するところまで育てる「1→10」、事業をより大きく成長させる「10→100」、そして100を維持し続ける段階と、それぞれの事業フェーズによって取れるリスクは異なります。したがって、それに基づく戦略も変わっていきます。

 すでに大きなマーケットシェアを取り、収益も大きな事業は、それを維持するだけでも大変です。下手な施策を打つと収益が下がりかねません。その場合は「守り」の戦略を考えなければなりません。これはシニアが資産運用フェーズで、リスクの少ない資産のアロケーションを増やすのと同じことです。

 私は50歳を過ぎていますから、守りの資産といわれる金や、償還日まで保持すれば会社が倒産でもしない限り元金が返ってくる社債への投資の割合を増やしています。ただ、それだけでは面白くないとも考えています。そこで守りの資産の割合をふやしてコア(核)としつつ、リスクを取って高いリターンを求める投資も同時に行っています。これを「コアサテライト戦略」と呼びます。

 企業におけるメイン事業と新規事業も、これと同じように考えられます。メイン事業では守りが大切ですが、新規事業ではリスクをある程度許容することが重要です。メイン事業と同じような「守り」の方針で新規事業を進めるのでは、全くやる意味がないといえるでしょう。

(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)