前回記事『台風・豪雨・地震が頻発、事業継続の明暗を分ける「災害対応」の基本理念』では伸び悩む事業の撤退について触れました。「最初の顧客を見捨てられないので、サービス提供を止められない」というようなケースはよく聞く話です。しかし株主から見れば、優秀な社員を何人も張り付けて、わずかな顧客のわずかな利益のためだけに事業を継続するというのは、ある意味、裏切り行為です。
投資を通じて株主の利益について考えることができるようになれば、正しいお金の使い方についても考えられるようになるはずです。上の例でいえば、株主と、未来のより多くの顧客のために、最初の顧客からは理解を得て事業をシャットダウンし、ほかの事業に限られたリソースを使うべきだということが分かるでしょう。
近年はいわゆる「物言う株主」が目立つようになりました。株式を買い占めることで無理難題を言って自分の利益だけを求めるという株主もゼロではないと思いますが、ある一定の割合の株を買った人は、株主総会においてそれ相応の発言権があることも確かです。自分が投資している会社の利益を最大化するためには、社会に対してもプラスになる企業活動をすべきだとして、発言する株主も増えています。そう考えると、日本でもようやく、株主総会において正しく議論ができる状態になってきているのではないかと思えます。
投資を続けることで意思決定の
プロセスが洗練される
最近、投資をしていて非常によかったと思うのは、自分の意思決定のプロセスが少し洗練されてきているのではないかということです。
「株式投資は心理ゲーム」とよくいわれます。儲かったらすぐ売りたくなり、損しているときには「いつか取り返せる」と思って保有し続けて塩漬けになってしまう。これはビジネスでも起きることです。
過去の投資のうち、撤退しても回収できない資金や労力のことをサンクコスト(埋没費用)といいますが、金融取引においても事業においても、撤退判断のときのサンクコストの考え方は極めて似ていると感じます。ここまで投資してきて、もう少し頑張ればうまくいくかもしれない。この考え方は根拠があれば正しい判断ですが、多くの場合はセンチメント(感傷)によるところが大きいのです。私も今は、決断をかなり機械的に行うように変わっています。