ジャニーズ事務所は歴史に残る社会問題を起こした非上場企業であり、そのオーナーとして藤島ジュリー景子氏はどうするべきなのか藤島ジュリー景子氏はどうすべきなのか、プロジェクトマネジメントの観点で考えてみると? Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

ジャニーズ事務所は歴史に残る社会問題を起こした非上場企業であり、そのオーナーとして藤島ジュリー景子氏はどうすべきなのか。官民で数々のプロジェクトマネジメントを行ってきた筆者が、プロマネの観点で助言します。(トライオン代表 三木雄信)

全ての利害関係者に配慮する
経営的視点が圧倒的に足りない

 ジャニー喜多川氏の性加害を、ジャニーズ事務所が記者会見で認めました。しかし、ジャニーズ事務所とCMなどのクライアントとしてかかわる複数の企業で、所属タレントの起用や継続を見直す動きが起きています。また、さまざまな立場での議論が噴出し、事務所名の変更の有無も含めて、事態の沈静化はまだ見えません。

 ただ、ジャニーズ事務所として対応すべきことは明確になりつつあると思います。そこで、連載『三木雄信の快刀乱麻を断つ』10回目の今回は、歴史に残る社会問題を起こした非上場企業オーナーとして、藤島ジュリー景子氏はどうすべきなのか、プロジェクトマネジメントの観点で考えてみます。

 私自身は、かつてソフトバンク社長室長として(孫正義氏の部下として)、ソフトバンク・グループの純粋持ち株会社化とグループ憲章の制定を担当しました。その経験からすると、全ての意思決定はジャニーズ事務所の株式を100%保有するオーナーのジュリー氏にかかっています。「何を残し、何を手放すか」をオーナー周辺の人材がオーナーに助言することはあっても、最終的にはジュリー氏が自ら考え、決断するほかないのです。

 さて、今般の問題は可及的速やかに解決すべき超重要プロジェクトです。まず大事なことは、ジュリー氏がプロジェクトのゴールを明確にすることです。

 現在のジャニーズ事務所の対応は、性被害者救済とそれに伴う広報、つまり危機対応のプロジェクトとして位置づけられているでしょう。このことは、外部専門家による再発防止特別チームのメンバーの経歴などを見ても明らかです。

 しかし、足元の状況を考えれば、事務所はプロジェクトのゴールを「コンプライアンスを確立した社会的にも法的にも責任を果たすエンターテインメント企業として認識され、将来にわたってその企業価値を守ること」に設定し直すべきです。つまり、全ての利害関係者に配慮する経営的視点が圧倒的に不足しています。なお、企業として消滅することは決して、社会的にも法的にも責任を果たすことにはならないと思います。

 さて、プロジェクトとしてそのゴールを「コンプライアンスを確立した社会的にも法的にも責任を果たすエンタメ企業として認識され、将来にわたってその企業価値を守ること」とした場合、今すぐに着手すべき施策が三つあります。