書きながら、自分のこれまでの生き方はどこかしら、これからの普通の日本人の先行的な例になるかもしれないとも思った。
 私のように若いころ挫折して、その後、場当たり的に生きる日本人や、55歳になって空しい思いに駆られる人間も、これから増えるのではないか。
 仕事が定まらない。30代半ばをすぎても結婚できない。家もなく引っ越しに次ぐ引っ越し。40歳過ぎて突然の病気。

 自分の人生は、たいした人生ではなかったけど、それなりに苦難や不運もあった。それでどうしたか。
 「考える」ことでなんとか切り抜けた。人生が行き詰まったら、そのときおりに、自分なりに考えてきた。
 人生の問題の大半に解答はない。考えることくらいしかできないものだ。
 つらくて憂鬱になったり、心身ともに疲れ切ったり、絶望してしまうこともある。それにどう向き合うか。どう考えるか。

 宗教とかポジティブ思考とか、そういうお仕着せの対処ではなく、素手で人生に向き合って考えてみたらいいのではないか。
 私はできるだけそうしてきた。たいした結果はないが、そのときおりごとに考えて生きてみた。

 何をしたという人生でもないと思っていたが、書いてみるとそれなりに、いろいろあったことに気がつく。

 30歳半ばで大恋愛をやってのけた。私の世代、男は20代後半には結婚し、30代には子どももあるものだった。いつか嫁さんが来るのではないかとぽかんとしていたら、35歳を過ぎた。一生独身だろうと諦めたら、10歳年下の女性と大恋愛してしまった。やるなあ、自分。

 それから四人の子どもの親になった。結婚したら子どもがあってもいいだろうと思ってはいたが、四人である。妻の故郷・沖縄で8年暮らしていた。子作り以外にすることはなかったのか。
 東京に戻り、ブログを始めてちょっとだけ有名になった。