電話中のビジネスパーソンと振り返る女性写真はイメージです Photo:PIXTA

後を絶たない
産業スパイ事件

 総合商社「双日」の元社員真鍋昌奨容疑者(32)が去年7月、以前勤めていた「兼松」が管理していた海外の自動車部品メーカーに向けた新製品の提案書や採算表など、営業秘密が含まれるデータファイル3件を不正に取得したとして不正競争防止法違反で逮捕された。

 さらに、警視庁は真鍋容疑者が兼松から双日へ転職する直前、3万7000件以上のファイルをダウンロードし持ち出した可能性もあるとみて捜査している。真鍋容疑者の転職先である双日は組織的な関与を否定しているが、3万7000件というファイル数から考えれば、その用途も含めて慎重な捜査が求められる。

 最近では、「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトの社長が以前勤めていたライバルチェーンの営業秘密に当たるデータを不正に持ち出した事件や、5Gに関する秘密情報を転職先の楽天モバイルへ持ち出したとしてソフトバンク元社員の男が逮捕された事件など、産業スパイ事件は後を絶たない。

 民間における不正調査でも情報漏洩(ろうえい)事案は非常に多く、OBが退職後に、現役に依頼して情報を持ち出す事例が多いことにも留意しなければならない。

 一般に産業スパイ事件では、アクセス権のある在職者やその在職者をそそのかす退職者によるものが多く、提携先や取引先企業による事案も少なくない。