欧州最大級の経営戦略コンサルティングファームがドイツに本社を置くローランド・ベルガーだ。長期連載『コンサル大解剖』では、同社のグローバルと日本国内の戦略を明らかにしていく。本稿は、前編として、グローバルマネジメントのトップを務めるマーカス・ベレット氏(ローランド・ベルガーのグローバル・マネージング・ディレクター)を直撃。成長ペースの鈍化が指摘されるグローバルのコンサルティング市場の見通しに加え、同社が経営体制を見直した理由、米国系ファームと異なる強み、ベレット氏が長らく担当した自動車業界で、自動車メーカーの勝敗を分ける「3つのポイント」、コンサル業界におけるAI台頭の影響などについて語り尽くしてもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
逆風にさらされる23年も
「20%成長」実現の見通し
――今年は欧米の大手コンサルティングファームの間で相次ぎリストラが明らかとなるなど、グローバルなコンサル市場で「ブームが一巡した」との見方も出ています。ビジネスの現状に関して、どのような認識でしょうか。
私はコンサルティング業界に身を置いて約30年になりますが、需要は継続して伸びてきました。というのも、クライアントとなる企業が直面する課題が年々、増加しているからです。DX(デジタルトランスフォーメーション)や人口動態の変化、脱炭素やコロナ禍のようなパンデミック、サプライチェーン問題など、枚挙にいとまがありません。
また、企業の経営陣を取り巻く環境も複雑化しています。コンサルファームへの需要は基本的に高まり続けており、今後も成長が見込めると考えています。
とはいえ、今年はグローバルなコンサルティング市場にとって、明らかにチャレンジングな年といえます。世界的に大企業のM&A(合併・買収)が減少し、クライアントの間でも、トランスフォーメーションやPMI(買収後の統合作業)、カーブアウトやデューデリジェンスなどに影響が出たのは否めません。
世界全体のグローバルなコンサル市場は今年、推計のソースにもよりますが横ばいから5%、あるいは1桁の後半ぐらいの成長率が見込まれています。通常は2桁成長が見込める中で鈍化が見られるわけです。そのように23年はいろいろな形でプレッシャーがかかった年だと思いますが、当社では今年、約20%の成長が実現できる見通しです。
――世界のコンサル市場の中でも、日本は「例外的に好調な市場」と見る向きも聞かれます。ローランド・ベルガーでは、日本市場をどのように位置付けていますか。
次ページ以降では、欧州最大級のコンサルファームである独ローランド・ベルガーのベレット氏が、日本市場の位置付けや、同社がグローバルの経営体制を見直した理由、米国系ファームとは異なる強みなどを明かす。さらに、世界で優秀なコンサルタントの争奪戦が起こる中、人材の確保策、ベレット氏が長らく担当した自動車業界の今後の勝敗を分ける「3つのポイント」、コンサル業界におけるAI台頭の影響などについても大展望。堅調に推移する世界のコンサル市場を上回る年20%の高成長を牽引(けんいん)してきたトップが、個社の戦略から産業界の先行きまでを語り尽くした。