欧州最大級の戦略コンサルティングファームが独ローランド・ベルガーだ。長期連載『コンサル大解剖』の前回記事(『独ローランド・ベルガーのトップを直撃!欧州最大級コンサル「年20%成長」の秘訣とは?』参照)では、同社の戦略を巡る前編として、グローバル方針を中心にひもといた。本稿では後編として、日本法人の大橋譲代表取締役(上写真)への取材などを基に、かつてない規模で動き始めた同社の大改革の中身を詳報する。世界の大手コンサルの多くが米国に本社を置く中、「欧州流」ならではの強みとは。さらには、今後の人員拡大方針も明らかにする。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
独大手コンサル日本法人が大改革に着手
「少数精鋭」から「規模」へ軸足
「顧客のトランスフォーメーション(変革)を支援するために、今の規模では足りない」――。ドイツに本社を置く欧州最大級の戦略系コンサルティングファーム、ローランド・ベルガー日本法人の大橋譲代表取締役はそう強調する。そんな言葉にも象徴されるように、同社では最近、かつてないほどの大改革に乗り出した。
前回記事(『独ローランド・ベルガーのトップを直撃!欧州最大級コンサル「年20%成長」の秘訣とは?』参照)では近年、同社がグローバルで年20%程度の成長を遂げてきたことを明かしたが、日本でも成長ペースを加速させるべく、新たな一手を打っているのだ。
振り返れば、米国に本社を置く戦略系コンサルファームの「MBB」(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティング・グループ、ベイン・アンド・カンパニー)と呼ばれる競合勢の一部は近年、堅調な国内コンサル市場と相まって拡大路線を走ってきた。一方、ローランド・ベルガーは伝統的に“尖った個人”の寄り合いのような社風が強いとされ、相対的に規模拡大とは距離を置いてきた。
よく言えば「少数精鋭」を貫いてきた同社はこれまで、個性的なコンサルタントらが柔軟に強みを発揮してきた半面、チームとしての組織的な動きは他社より限られるとの見方があった。さらに言えばローランド・ベルガーは長らく、グローバルでも自社内でマーケティング機能の体系的な組織を設けず、昨年後半ごろからようやく組織的な見直しを行い、担当者を配置するなど、ユニークな組織形態で運営されてきた。
”コンサルバブル”とも称される昨今の状況下で、競合が積極採用を続ける一方、独自路線を歩んできた同社。日本での存在感も相対的に低下したという見方も出ていたほどだ。
そんな中、特に今年以降、ローランド・ベルガーは日本法人でも改革を進めている。例えば、新卒採用を含む本格的な人員の拡大に乗り出したのだ。端的に言えば、改革の方向性とは、以前より「組織的な強みを発揮する」ということにある。
次ページでは、大橋氏への取材などを基に「少数精鋭」主義からシフトし、大改革へと動き始めた同社日本法人の今後の戦略などを徹底解説する。世界の大手コンサルの多くが米国に本社を置く中、大橋氏が考える「欧州流」ならではの強みや、直近の具体数を踏まえた人員拡大方針などを明らかにする。