米中対立が先鋭化する今、産業界で重要キーワードとなっているのが「経済安全保障」だ。企業の経営課題に応えるコンサルティング会社の間でも近年、大手総合系ファーム「ビッグ4」などが同分野のサービスや人員を拡大してきた。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、ビッグ4各社の関連サービスや経済安保への取り組みをひもとく。さらに、各ファームの担当パートナーらに、クライアントとなる日本企業が抱える課題や、地政学リスクへの対処に苦心する日本企業への処方箋を聞いた。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
三菱電機、デンソー、IHI…
専門部署立ち上げ企業が続々
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「脱炭素」に並び立つ最近の産業界の重要キーワードに、「経済安全保障」は挙げられるだろう。米中対立が続く昨今、特に事業を国際展開する日本企業の間では、こうした観点をビジネスの意思決定に組み込むことが欠かせなくなりつつある。
日本では昨年5月に経済安全保障推進法が成立。重要物資確保や基幹インフラの事前審査制度などの法整備が進んだほか、今年8月下旬には、高市早苗経済安全保障相が2024年の通常国会に経済安保推進法の改正案を提出する方針を明らかにした。民間の動きを見ても、ここ数年内に三菱電機やデンソー、IHIや富士通といった大手企業が経済安保に関する専門部署を立ち上げるなど、具体的な動きが続々と表面化しているのだ。
そして、クライアント企業の経営課題に応えるコンサルティングファームも、平仄を合わせる形でサービスや人員を拡大してきた。特にこうした分野に積極姿勢を示すのが、総合系ファーム「BIG4」(デロイト、PwC、EY、KPMG)だ。
例えばPwCグループでは、21年秋に企業の「経済安保・地政学リスク」対策支援チームを組成。KPMGコンサルティングでは、22年11月に経済安保・地政学リスク対応の支援サービスを刷新した。EYストラテジー・アンド・コンサルティングでは今年5月、企業の経済安保に関連したリマニュファクチャリング(部品の再活用)支援コンサルの提供を始めている。
一口に「経済安保」や「地政学リスク」関連の支援といっても、サプライチェーン強靭化やサイバーセキュリティ、各種の規制対応などに至るまで、分野横断的な対処が求められる領域でもある。このため、同業のみならずシンクタンクや政府関係者、メディア界など多様な人材を呼び込みながら、この数年で関連サービスや体制の充実化が進んできた。
次ページでは、コンサル大手BIG4各社が手掛ける経済安保関連のサービス内容や人員体制をひもとく。また、各ファームの担当パートナーらへの取材を通じ、顧客先である日本企業から漏れる悩みや課題を明らかにする。米中の争いが激化するなど地政学リスクが高まる状況下、各ファームは対応に苦心する日本企業へいかなる処方箋を提供しているのだろうか。