非食品における貿易ビジネス
ASEAN市場の攻略が重要に

 食品におけるキーワードがコールドチェーン構築だとすると、非食品におけるキーワードは貿易だ。これを軸にASEANの事業強化に乗り出しているのがイオンやニトリだ。

 イオンはカンボジアに物流拠点を作り、国際物流事業を始める。同国における輸入品の保管や通関業務代行にも事業拡大をすることが伝えられている。

 ニトリも、北海道内の企業を支援する形で、米や酒などの食料品を日本から輸出することを計画している。同事業の年商は現在1億円だが、2032年には35億円まで拡大させる方針だという。イオンもニトリも、現在の主力事業は小売業だが、今後は卸売機能でもASEAN展開を画策している。

 他の主要業態にも同様の動きが見られる。高島屋はトランスコスモスと提携し、アジアのECや小売企業に対し日本ブランドの商品を卸売販売している。北海道のセコマは、シンガポールをはじめアジア各国に北海道ブランド品やPB商品を提供している。

 日本の小売業のASEAN進出は、1980~1990年代は現地駐在の日本人向けだった。21世紀では、可処分所得が上昇した主要都市の富裕層・中間層に対象が遷移した。経済水準の上昇は、現地資本の小売業の成長を促す。日本の小売業と現地の小売業の経営力格差はもはや明確に観察されない。現地小売業大手のシェアも高くなっている。

 日本の小売業にとって、今後は出店のみが最適なASEAN戦略ではなくなりつつある。多額の費用がかかる出店ありきではなく、貿易ビジネスも選択肢に入ってきたと考えられる。

 昨今の円安基調も相まって、肥沃なASEAN市場の攻略は日本の小売にとって重要なアジェンダとなるだろう。衣・食・住それぞれにおける日本企業の創意工夫が求められる時代となった。

(フロンティア・マネジメント マネージング・ディレクター 近藤俊明)