「株式6割、債券4割」の常識が
否定される日が来るかもしれない

 一方、投資対象としての債券を正当化するロジックに、株式のリスクと債券のリスクを組み合わせると分散投資効果が働くし、特に両者のリターンが逆相関ならその効果が大きいという考え方がある。しかし、肝心の株式と債券のリターンの相関係数は安定していない。「景気悪化→株式不振→長期金利低下=債券価格上昇」のような期待通りの効果が表れることもあるし、「インフレ高進→金融引き締め→株価下落→債券利回りも上昇=債券価格下落」のような「踏んだり蹴ったり」的な苦境に陥ることもある。

 信用リスクに伴う社債などのスプレッド(国債利回りへの上乗せ利回り)には、株式の場合と似た性質のリスクプレミアムがあっておかしくない。しかし、資金に対するプレミアム獲得の効率性を考えると、債券で運用する資金を株式のリスクに振り向ける方がいいのではないかと考えることができそうだ。

 債券は投資の単位が大きいので巨額の資金がないと分散投資ができない。また、債券、特に外国債券に投資する投資信託はそれなりに手数料が高いことが多い。

 従って筆者は、個人投資家には外国債券に投資することを勧めない。また、国内債券にも魅力を感じない。個人の場合は内外の株式に、自分にとって適切だと思う金額だけ投資することがシンプルでもあり、好ましいと思う。

 では、機関投資家にとって外国債券はどうなのかということが知りたいが、資金サイズが大きくなったからといって、個人の運用の場合とロジックが異なるわけでもない。筆者は、外国債券の長期投資に気が進まない。外国債券部分のリスクは、株式運用に振り向けた方がいいのではないだろうか。

 仮に、債券のクーポン(利息)収入が定期的なインカムゲイン収入になること、売却しなくても得られるキャッシュであることなどが魅力だと考えるのであれば、分配型の投資信託を買っている個人投資家とたいして変わらないレベルなので、プロの運用者は辞める方がいいだろう。投資はトータルリターンで最適を目指すものだ。

 投資対象としての債券は、一定の目的があるときなどになくなると困るが、長期投資の対象として基本ポートフォリオに組み込んでずっと持つような資産ではないのではないかと思い始めている。「株式6割、債券4割」は米国の年金運用などで基本的な投資配分とされてきたが、この常識は否定される日が来るかもしれないと思っている。