11月8日時点の情報では、ハマスの攻撃によってイスラエル側で少なくとも1400人が死亡したというが、ガザ側での死者は1万人を超え、死者の約4割が子どもで、女性を合わせると約7割を占めると報じられている。イスラエルにとって「報復=死者・負傷者の数」という意味では、すでに目的は果たされていると考えていいのではないだろうか。
残る問題は、人質問題だろう。《イスラエルの公共放送「Kan」が木曜日、軍関係者の話を引用して伝えたところによると、ガザでは、30人の10代の若者と幼児、20人の60歳以上の人々を含む、推定200人のイスラエル人が監禁されているという》(アルジャジーラ、23年10月21日)。この問題が解決でき次第(どんな結末を迎えたとしても)、イスラエルは即刻、停戦をしなくてはいけない。
ハマス殲滅を目的にすると
一般市民まで犠牲に…
ハマスは、1990年代に存在感を高めた新しいタイプの武装勢力だ。何が新しいかといえば、民間人に紛れ込む、民間人を洗脳して自爆テロを敢行する。学校や病院などの民間施設に武器を保管し、ロケット発射基地に使用するなどの戦法に、イスラエル軍は頭を悩ませてきた。
これら一般市民を巻き込むという手法を駆使する新しい武装組織ハマスに対して、イスラエルは過去にもイスラエル軍による強力な攻撃を試みたが、大きな戦果は挙げられなかった。そういった過去の歴史を考えると、今回の大規模な地上戦でハマスが本当に殲滅(せんめつ)できるのかというと大きな疑問が残る。
ハマスの卑怯さではあるのだが、やはり民間人とハマスの戦闘員の区別がつかないとすれば、ハマス殲滅を目的にしてしまうと、ガザ地区の住民を全員虐殺する以外に方法はない。