プロが教える
在宅介護の3鉄則

 和子さんと由美さんのケースは特別なものではなく、むしろ「介護あるある」です。

 和子さんがお風呂に入らなかったのは、元からの風呂嫌い、めんどうくさいという気持ち以外にも、お風呂くらい自分で入れるという自尊心、しかし、実際は入り方が分からなくなっているという可能性が考えられます。一方で、娘の由美さんはお母さんが拒絶している時の声掛けや誘導の方法が分からないため、結果、放置を選ばざるを得ない。そういう日々の繰り返しになると、徐々に「本人が嫌なら仕方がない」という思考に傾くのは無理からぬことかもしれません。更に、母親が入浴もせず、ひとりでは排泄もできないということを他人には言えないという心理が働くため、外部の助けが入りにくい状況に陥りやすいのです。そうならないためにも、以下のことを意識してみてください。

1 遠慮なく包括を頼ろう

 包括は地域にある中学校と同じくらいの割合で存在している「介護よろず相談所」のような場所です。介護のプロが揃っていますので、まずは安心して頼ってください。どこにあるかが分からない場合は市役所に問い合わせを。文中にもありましたが、お年寄りの誘導にもプロの技がありますし、他人だからこそ、うまくいくケースも沢山あります。

 お年寄りの状態が急変するのはよくあること。前回の認定結果が軽かったとしても、遠慮することはありません。認定結果が決まっても、状態が変われば、区分変更の申請はいつでもできます。和子さんのように認定が切れていたとしても包括への相談は常時、可能です。
介護はひとりでやると共倒れになりかねません。プロに相談しながら、様々な人たちと共に介護していくということが可能ですから、家族だけで抱え込まないようにしましょう。

2 かかりつけ医を持とう

 かかりつけ医がいると、認知症などの異変にも気付いてもらいやすいです。

 和子さんのケースでしたら、ここまで症状が進む前に、かかりつけ医や医療スタッフのほうから包括などの支援先を紹介してくれる可能性は高くなります。介護認定を受ける際には、「主治医の意見書」が必要ですので、日頃の様子を知ってくれているドクターの助けがあるとより心強いでしょう。

3 人との繋がりを持とう

 元気でいるためには刺激が必要。閉じこもりの生活は心身に良い影響を与えませんので、お年寄りの「きょうよう(=今日、用事がある)」と「きょういく(=今日、行くところがある)」を大切にしてみてください。そのためにも、元気な時分から地域の高齢者向けサロンなどに顔を出すことをお勧めします。市区町村のホームページには、様々なサロン情報が掲載されていますので、興味のあるものには、是非、参加を。

 また、外部の刺激はお年寄りだけではなく、介護者である家族にも必要。由美さんのように、閉じこもって、一人で奮戦するよりも、地域の人などと気軽におしゃべりをする機会を持つ方が有益な情報も得やすいです。家の中だけで孤立しないようにしていくことも大事な作戦です。