ファンの心に必要だった
ダメージコントロール

 さて、こうした状況下で、羽生氏はいきなり自身とお相手の結婚を発表した。相手は、一般人なのだとしか分からない。精神のバランスを保つことができないファンが相当な数で存在していたであろうことは想像に難くない。少なからぬファンの心には、ダメージコントロールが必要だったのではないか。

 もちろん、ストーカー行為や、好奇の目を注いだり、両人の親戚等に文句を言ったりする行為は「悪い」し非難されるべきだ。ただ、相当数の「変な人」が予測できないところから現れかねない現実には備えておく必要があったのではないだろうか。ファンの母数の大きさや熱心さの度合いに、精神のバランスを崩す人の発生確率を考えると、羽生夫婦が日本で普通に暮らすのは、危ないのではないか。

 身に迫るリスクを考えると、危険の多い日本を離れて、まずは夫婦が海外で暮らす形を用意した方がよかったのではないか。その上で、情報の出し方は難しいが、ファンが少しでも納得できる情報を小出しに提供するなど、ファンの精神的ダメージの緩和手段を講じるべきではなかったか。

 もちろん、これは法律や心理の専門家のサポートが必要な問題だ。

アイドルは巨大ビジネスで
「羽生結弦」は超有力ブランドだ

 羽生氏がアイドルであることは、これまで日本スケート連盟や、試合を中継し視聴率を稼ぐテレビ局をはじめとする各種メディアなどに多大な利益をもたらしてきた。

 フィギュアスケート業界に限るとしても、羽生人気でフィギュアスケートの教室は申し込みが増えただろうし、全国各地のリンクの客も増えたはずだ。こうした需要に対しては、羽生氏がアイドル的な人気を持っていて、アイドルとして惹きつけた顧客をつなぎ留めていることが重要だ。

 つまり、フィギュアスケートビジネスにあって「羽生結弦」は、超有力なブランド商品として管理されなければならない資源なのだ。人的資本でもあり、同時に商品でもある。