通勤中のビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

実質賃金はマイナスで、多くの労働者が生活の改善を実感できていない。これには、中小企業の生産性と価格転嫁の問題が潜んでいる。この問題を考える度に「コスト削減は誰でもできるから経営の課題ではない。高く売れるようにすることが経営の仕事だ」という言葉を思い出す。日本はもっと、自社商品をいかに高く売るかを考えなければならない。(未来調達研究所 坂口孝則)

伸びない賃金
生産性と価格転嫁の問題

 厚生労働省が11月7日に公表した9月の毎月勤労統計(速報)によると、実質賃金は前年同月比で2.4%減だった。名目賃金は1.2%伸びたものの、物価上昇が3.6%もあった。差し引き、賃金はマイナスで、多くの労働者がまだ、生活の改善を実感できていない現状だ。なお、実質賃金は18カ月連続の減少となっている。

 2022年の初めあたりまでは、実質賃金はプラスだった。しかし、それ以降はずっとマイナスだ。これには、中小企業の生産性と価格転嫁の問題が潜んでいる。

 幼稚にまとめるならば、賃金をプラスに持っていくためには、次が必要だ。

・中小企業がもっと稼げる体質になる
・中小企業が価格転嫁を適正に進める

 サプライチェーンの最前線に携わる者として、各企業の現場でサプライチェーンの改善をあれこれと考え続けている。その過程で、中小企業の生産性や価格転嫁の問題について実態を見てきた。その経験から、以下、いくつかの提案を述べたい。