──開発を進めていくにあたって、苦労したのはどのような点ですか。
最も苦労したポイントは「前例がない」ということです。ホバーバイクとして、どういう構造が正解なのか、どういうスペックにすればいいのか。「これが正解」というものがありません。そのため、前後にある大きな2つのプロペラが全体の推力を生み出し、左右の4つのプロペラで姿勢を安定させるという形状にたどり着くまでに試行錯誤を繰り返しました。
もちろん、現在の形状もベストだと思っていません。さらに改善を重ねる必要があります。また開発に関しては、パートナーとなってくださっている多くの日本の大企業が持つ技術力を活用できたことも非常に大きかったと思います。
そのほか、ホバーバイクという未知のものに対して、たくさんのベンチャーキャピタル(VC)や企業が可能性を感じ、投資していただけたことも大きかったです。そのおかげで開発までこぎつけることができました(編集部注:同社は2019年11月に三井住友海上グループ、京セラ、三菱電機、JR西日本イノベーションズなどから総額23.1億円の資金を調達している)。
ドローン開発で培った技術を、ホバーバイクに
──ホバーバイクとしてはどのような用途を視野に入れているのでしょうか。
すぐに公道で走行できるわけではないので、まずはサーキットや海、緊急時の利用など、ある程度限定された場面での利用を想定しています。ただ、将来的には公道も含めた幅広いシーンで使えるようなモデルにするために、法整備を含めて対応していきたいですね。
──エアモビリティ業界における競合優位性も教えてください。
多くの企業が航空機のカテゴリで耐空証明・型式証明を取得しようとしていますが、私たちは車両の延長線上のような扱い(編集部注:航空関連の法規ではヘリコプターは市街地では高度300m、それ以外のところでは高度150m以上を保って飛行するように定められている)にすることで、より早く世の中に実装したいと考えています。
ただ、政府は「空飛ぶクルマの実現に向け、2023年からの事業開始を目標に制度整備を推進」との方針を示しているので、引き続きコミュニケーションを続けていければと思います。
もうひとつの優位性は、エンジンがガソリンと電動バッテリーであること。それにより、実用性のある走行性能(最長航続時間40分、最高速度80km/h)を実現できていると思います。もちろん、いずれは電動バッテリーのみにシフトしていきたいと考えています。