「対象者が絞られればストックオプションに関わる手続きのコストも下げられるため、RSUと同じ効果を得つつ、株式交付タイミングの制限を外せるストックオプションを導入しました」(メルカリの広報責任者)

ここ日本でも、特にエンジニア採用は激化している。転職サイト「doda」が2021年8月に公表した「転職求人倍率レポート(2021年7月)」によれば、同年7月、エンジニアを含む「技術系(IT・通信)」の求人倍率は9.17倍だった。企業が転職エージェントに支払う紹介手数料は通常、採用した人材の年収の35パーセント程度だが、ある業界関係者によると、特に優れたエンジニアを獲得するために200パーセントもの紹介手数料を支払う企業も出てきたという。こうした中、優秀な人材を獲得する上で、スタートアップはより大きなインセンティブを検討していく必要があるだろう。

一方で、既存のストックオプション制度には課題が残る。別の業界関係者は「ベンチャーキャピタルが嫌がることもあり、日本のスタートアップのストックオプションは全株式の10〜15パーセント程度と小さい。米国では20パーセント前後が通常です」と語る。

日本のストックオプション制度は欧米を中心とした諸外国と比較するとまだ発展途上の部分が多い。信託型ストックオプション、退職後も権利行使できる仕組み、RSUなど、人材獲得のためのインセンティブ制度の検討は、今後ますます重要になっていくだろう。