まず、Coyote VenturesとFemtech Focusは更年期の症状や生理中の女性が体験する症状、女性が体験しやすい片頭痛や免疫系疾患など125個の領域を特定した。その後、各領域の市場規模を足していくと、約138兆円になるという。これらの125個の領域には現状で市場規模が明らかになっていないものもあり、今回の市場予測は明らかになっている情報のみを利用している。

Coyote VenturesとFemtech Focusが出版する2021年のフェムテック市場総括レポートより
Coyote VenturesとFemtech Focusが出版する2021年のフェムテック市場総括レポートより

レポートでは、フェムテックで現在取り組みが進む領域についても分析を掲載している。Femtech Focusは、現在アクティブな900件以上の世界中のフェムテック系スタートアップをまとめたデータベースを構築している。

このデータベースには「毎月約20社が追加されている」(バレット氏)とのことで、市場の急速な成長を感じた。その内訳を見てみると、フェムテックスタートアップの51%が、生理、妊婦の健康、不妊治療、セクシャルウェルネス系の課題解決に取り組んでいる。一方、慢性疾患に取り組むのは、わずか1%ほどとなっている。

先進国であるはずの米国だが、女性の健康とウェルネスに関する課題は山積みだ。例えば、妊産婦の死亡率は年々増加しており、先進国の中で最も妊産婦の死亡率が高い国となっている。また、生理用品が手に入らないために学校に行けない子どもが5人に1人いるという。生理用品の環境への影響も深刻だ。米国では、毎年200億個もの生理用品が埋め立てられている。

富裕層をターゲットにした製品には、飽和状態に近づく領域もある一方、有色人種、発展途上国や低所得の女性などをターゲットにしている企業はまだ少ない。女性の子宮の健康、メンタルヘルス、慢性疾患、循環器系の分野では、市場規模が大きく、需要が高いが、参入している企業が限られているため、イノベーションの大きなチャンスがあるという。

Coyote VenturesとFemtech Focusが出版する2021年のフェムテック市場総括レポートより
Coyote VenturesとFemtech Focusが出版する2021年のフェムテック市場総括レポートより

こちらの表は、1990年以降のフェムテック企業のイグジット数を製品カテゴリごとに示している。1位は医療機器、2位は診断、3位はコンシューマー向け製品となっている。コンシューマー向け製品に取り組むフェムテック企業は、全体の25%を占めており、最も競争が激しい領域だが、イグジット数に限っては医療機器領域の6.5%、診断領域の10.7%には遅れをとっている。

コンシューマー向け製品では近年、自己免疫疾患の症状を抑えるアプリ、女性特有の症状を抑えるアプリ、特定のメンタルヘルスの症状を抑えるアプリなどが登場している。特にデジタルヘルス分野では、自己免疫疾患や女性特有の症状、特定の精神疾患などを対象としたアプリが複数あり、これらのアプリをユーザーベースで獲得する大規模なヘルスケアシステムが今後数年間で増加すると予想される。