同時にAdTech(アドテック:広告技術)が発展し、どの顧客がどのサイトでどの広告を何回見たか、何秒見たか、その後どのような行動を取ったかなどのデータが取得可能となった。商品を販売する企業は顧客情報などのデータをたくさん集めては分析し、商品の売上を最大化するために、さまざまなアフィリエイトサイトやメディア、ソーシャルメディアで広告を出し、その内容や出し方をデータ分析の結果に基づいて最適化し続けている。

一方、商品を購入する消費者には、自身の行動が常にモニタリングされ、分析されていることに対して不快感を覚える人も多い。また、UI・UXを重視し、メディアやプラットフォームに広告を載せないことを求める消費者も増えている。各国政府や企業はそういった消費者の意向をくんで、手を打っている。

EU(欧州連合)は一般データ保護規則「GDPR」を施行し、米国カリフォルニア州は通称「Prop 24」という法改正を行った。また、GoogleはブラウザのChrome上で個人を特定できるサードパーティー「Cookie」を2023年までに廃止することを宣言し、Appleは2020年にiPhoneなどデバイスを特定できるIDFAに使用制限を設けた。(編集部注:IDFAを使うには、デバイスの持ち主である消費者側の同意が必要となる)。

Web3はそうしたWeb2.0の施策のさらに一歩先を進んでいる。具体的には、コンテンツの情報をオンラインプラットフォームで自由に発信・受信できるだけでなく、そういったプラットフォームで記録されたさまざまなデータをどう活用して、どう収益を上げるのか、さらには収益をどう運用し、分配するのか、それらの決断の権利をユーザー、消費者、一般の人の手に取り戻せる。

また、プラットフォームを使い込めば使い込むほど、プラットフォームが創り出した「価値」を享受できるようになっている。

Web3がそれを実現できるのは、「株式」に代わる「トークン」と、「会社」に代わる組織形態「DAO」と、「広告収入」に代わるビジネスモデル「トークンエコノミクス」のおかげだ。本記事ではメディア業界におけるWeb3の具体例をいくつかピックアップした。

Web3型ブログプラットフォーム:Mirror.xyz

Mirror.xyz(以下、Mirror)は米国大手VCのAndreessen Horowitz(a16z)の元パートナーであるDenis Nazarov氏によって2020年12月にローンチされたサービスで、初期の頃は「ブロックチェーン版のMedium」と呼ばれたが、ここ1年でさまざまな新しい機能が追加された。Web2.0では比較対象が見当たらないほど、独特なサービスになりつつある。