そして、伸ばしていく産業ではなく規制していく対象でした。その後、日本の家電メーカーは中国や韓国の安価で高品質な新興メーカーにどんどん世界でのシェアを奪われていき、自動車メーカーも今まさに脱炭素・電気自動車の世界的なトレンドの中で同じ岐路に立たされています。アメリカと中国は早くからインターネットが世界の産業の中心になることを見抜いて、育成と管理を国家レベルで進めていました。

佐藤航陽著『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』(出版:幻冬舎)
佐藤航陽著『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』(出版:幻冬舎)

モノづくりで窮地に立たされ始め、インターネットの産業としての重要性に日本が気づいた2010年代ごろにはすでにGAFAやBAT(中国三大テック企業 Baidu・Alibaba・Tencentの頭文字)といったグローバルIT企業が市場を占有しており、手遅れになっていました。

日本は国としてインターネットという新しい技術の将来性を見誤ったことで、その後の年間で成長産業を生み出せず、ずるずると世界での影響力を失っていきました。このまま行くとメタバースでも全く同じ失敗をすることになる危機感があります。ただ、今回はメタバースは日本に圧倒的な「地の利」があります。実は日本は極めて有利なポジションにあるのです。

「人材・知財・文化」のすべてが揃う、日本の強み

それは日本が漫画・アニメ・ゲームなどの「コンテンツ大国」であるという利点です。
ここまで日常的に漫画を読み、アニメに触れて、ゲームに課金するという国は世界的に見ても非常に珍しいです。日本で作られているコンテンツは海外にも輸出されて人気を博していて、日本が他国にも誇れる数少ない産業です。

漫画であれば『ドラゴンボール』『NARUTO』『ワンピース』などは昔から中国や東南アジアでも大人気ですし、最近では『鬼滅の刃』が北米でも映画が大ヒットして全米興行収入1位を獲得する快挙となりました。

映画ではジブリ作品や『君の名は。』も大人気です。ゲームにおいても『マリオ』『ポケモン』は世界的な知名度があり各国に熱狂的なファンがいます。『ファイナルファンタジー』や『キングダムハーツ』も世代を超えて人気です。

任天堂やプレイステーションを作っているSONYも世界で最も有名な日本企業です。後述しますが、メタバースはゲームが入り口になります。これらのコンテンツをゼロから作り出すことができるのは非常に強力な強みとなります。
 
日本は「人材・知財・文化」の3つすべての観点からも他国に比べて下駄を履いてスタートできる有利な状態なのです。「人材」の観点で言えば、これほど漫画やゲームや映像を作りたい人が溢れている国は珍しいです。