サステナブルな再エネ電力を地産地消型で利用する
上村氏は2009年ごろから再生可能エネルギー領域の事業に携わってきた。当時上村氏が代表を務めていたアイアンドシー・クルーズはエネルギーや住まいの領域でサービス比較メディアを複数運営しており、「10年間ほど、太陽光発電システムのコストが下がっていく様子をずっと肌で感じていた」(上村氏)という。
シェアリングエネルギーは2018年1月、環境エネルギー投資とアイアンドシー・クルーズとのジョイントベンチャーとして設立。「比較サイトで太陽光発電システムの仲介をするより、当事者として再生可能エネルギーを広げていく方が早いのではないか」と考えた上村氏らにより、最初は別会社としてスタートした。2020年2月にアイアンドシー・クルーズがじげん傘下に子会社として入ることになったタイミングで、上村氏ら経営陣が株式を取得して現在の形となっている。
太陽光発電システムにかかるコストは十数年で10分の1近くまで下がり、「山を切り開いて大がかりにパネルや機器を設置する」という姿からは、登場するプレーヤーもバリューチェーンも大きく変わっている、と上村氏は語る。
「脱炭素社会へ向かう中で、あるべき姿としては再生可能エネルギーの分散電源をあまねく広げることによって、エネルギーシステムを地産地消型に変革していくのが正しいのではないかと考えています」(上村氏)
シェアリングエネルギーでは、住宅の屋根の上で太陽光により電気を作り、そこでできたエネルギーをバッテリーや電気自動車にためながら自家消費率を高めることで、系統外から電気を買う必要がない状態に近づけようとしている。さらに余った電気は、地域内で流通させる姿に変革していくことを目指す。
背景には脱炭素社会への潮流に加え、自然災害などによる停電時にレジリエンスを確保するという目的がある。その観点では、電力需要と直結する戸建てのルーフトップがこれからの分散電源の主流になると、上村氏らは見ている。
また、昨今では「電力卸市場の単価が上限に張りついている」と上村氏。ずっと高騰化する電気代を払うのではなく、自分たちで発電してサステナブルな形でエネルギーを担保できる状態に入る必要があるだろうと、上村氏らは考えている。
井口氏は、家庭用の電気料金が上昇する裏側には、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)や燃料費調整額の影響があると言う。再エネ賦課金や燃料費調整額を加えた一般的な家庭の電気料金の金額は、特に2021年に入って以降、急激に増加している。