飼い主との接点を作るためのメディアが会社の窮地を救う

しかし、運は残っていた。主力事業を保護犬猫のマッチングサービスではなく、メディアを起点としたペット事業に取り組んでいくことが、PETOKOTOにとって大きなターニングポイントとなる。

「将来的にペット向けのフード事業を展開しようという構想は頭の中にありました。ただし、まずは飼い主との接点を作るための場所として、メディア事業から着実にやっていくことを決めたんです。ペット向けのメディアといっても、間違った情報や古い情報が掲載されるようではいけない。PETOKOTOはペットを飼うにあたり情報がほしい飼い主に向けて、実名の執筆者による記事を配信しています。その際、取締役に獣医師を入れ、獣医師やトリマーなどの専門家にも記事の執筆をお願いするなど、情報の“信頼性”を意識しています」

「犬でも人間と同じように、対象の臓器や疾患によって専門の獣医師がいます。ただ獣医師にお願いするのではなく、それぞれの専門分野に特化して書いてもらう。身近なケアだったらトリマーに執筆をお願いします。自分たちは経営陣、社員もペットを飼っているという経験があるんです。どんな情報がほしいかは経営陣も含めて、当事者としてニーズを知っているからこそ、インターネット上にある情報では何が足りないか、何がダメかがわかっていたんです」

会社の窮地を救ったのは、メディアのユーザーだった。ペットの病気について調べようと検索してたどり着いたユーザーが、専門家の解説した記事を読むだけでなく、例えば“犬を遊ばせられるスポット”といった記事も読む。結果的にメディアへの滞在時間が長くなり、ペット情報と言えば「PETOKOTO MEDIA(ペトコトメディア)」といった人々が増えて、ひとつのコミュニティができる。好循環が生まれた。

“餌”ではなく“ごはん”にした、フレッシュフードに感じた可能性

そのサイクルの先に、フード事業がある。ペットフードといえば、すぐに思い浮かべるのはドライフードだ。大久保氏が目をつけていたのは、海外では市場が伸びている、ペット向けのフレッシュフード。ドライフードなどの既存領域には大手企業がひしめいており、スタートアップが参入する余地はない。

だが、フレッシュフードは日本ではほとんど手をつける企業がない。単純に製造が高コストだったり、工場のラインを作り替えるなどの手間がかかり、かつ日本ではニーズがあるのかどうか見込めないことが大きな理由だ。そこに参入の余地があると、大久保氏は判断した。