「こいつ、もしかしたら大したことないんじゃないか」。社内からも次第にそのような目で見られるようになっていった。

「ネットで買うと送料がかかってしまうので、どうしても地元の販売店で買うよりも値段が高くなってしまうんです。実店舗で注文すれば担当者がサイズを測ったりしてくれるのですが、ネットの場合はそれも自分でやらなければならない。おまけに当時は問い合わせへの対応も遅く、届くまでにも時間がかかっていました。要するに『高い、遅い、面倒くさい』上に、(実績もなかったため)胡散臭いサービスだったんです」(辻氏)

ただ全く先が見えない状況だったかというと、そうではなかった。最初の半年間で見つけた“たった1社の顧客”の声が、辻氏の状況を変えていくことになる。

その顧客は福岡にある空港の整備系の会社で、オーダーの内容は「(業務用の)大きなダンボールを1箱だけ、しかも明後日までに届けて欲しい」というものだった。

「当時業務用のダンボールは注文できるロットがだいたい100箱とか1000箱からで、1箱あたり数十円というのが一般的でした。1箱だけとなると、加工賃や送料などを踏まえると安く見積もっても7000円くらいにはなってしまう。難しいだろうなと思いながら、えいやで見積もりを出してみると、その価格で売れちゃったんです」(辻氏)

なぜ7000円でも買ってもらえたのか。1つは納期を間に合わせ、きちんと2日で届けられる状態を作ったこと。もう1つは他では断られるような小ロットの注文に対応できたこと。この2つが大きかったと辻氏は話す。

「どうしてそれまで気づけなかったのかはわからないのですが、結局他の事業者と同じ土俵で戦ってしまっていたんです。それこそ小学生の時の駄菓子屋の経験と同じで、地元の駄菓子屋と同じものを売っていても仕方がない。この時に(他の事業者がやっていない)1箱からでも作ること、納期にこだわって高くても早く届けることを中心にやっていこうと決めました」(辻氏)

成長の要因は「業界で非常識と思われていたことをやり続けた」こと

サービスの軸が明確になると、事業の風向きも変わっていった。少しずつ企業からの問い合わせがくるようになり、顧客の声を参考にしてサービスを改善できるようにもなった。

辻氏によると「小ロットの対応」「既製品の販売」「自動見積もりシステムの導入」の3つは、初期のダンボールワンの成長を支えた取り組みだ。

当時ダンボールは受注生産が主流だったが、ユーザーに聞いてみると必ずしもオーダーメードを求めているわけではなく、「売れているサイズのダンボールが欲しい」というニーズが一定数存在することがわかった。