同じ商品を買っているのに、人によって満足度が違うことがあります。それは、どうしてでしょうか? 「売る」と「売れる」――両者の間には決定的な違いがあったのです。
「売る」と「売れる」は違う
重箱の隅をつつくようですが、とても大切な話があります。
それは、「売る」と「売れる」は違うということです。これを理解していただかないと、これからお話ししていく「対話のコツ」を理解しにくいので説明しますね。
まず、「売る」は、こちらが行動をすること。
こちらから「買って!」とアプローチした結果、売れていく。こちらから相手に矢印が向いているイメージです。一方通行の矢印で、そこには「説明や説得」が必要です。
僕は「売る」と考えると、それだけで気持ちが重たくなります。商品やサービスに興味もない人に押し売りしているようで、「申し訳ないな」という気になるのです。断られるのも嫌ですしね。
一方で、「売れる」は、相手に行動を起こしてもらうこと。
相手と対話して、相手から「欲しい!」とアプローチしてもらい、売れていく。相手とこちらの双方に矢印が向いているイメージで、そこには「理解と合意」が必要です。
「売れる」なら、心が重たくならないし、断られることもないから凹(へこ)まなくていいですよね。
「売れる」とお客様の満足度が上がる!
「売る」の場合、相手は、あなたに言われたから「買う」となります。そうなると期待値が高くなるので、満足させるのも難しくなります。クレームにもつながりやすいです。
一方、「売れる」の場合は、相手が自ら「欲しい!」と言って買っているので、満足してもらいやすくなります。
たとえば、世の中に幸せな人とそうでない人がいるとしましょう。その二人の日常を比較したら、幸せな人にだけ特別にいいことが起きているとは思えません。今日の出来事を事実としてあげていったら、幸せな人もそうでない人も、同じような時間を過ごしていると思うのです。
では、この二人は何が違うかというと、幸せな人は自身の幸せな面を見ていて、不幸な人は自身の不幸な面を見ているというだけです。よく言われる話ですが、コップに半分の水があるとき(事実)、「半分もある」と思うのか、「半分しかない」と思うのかの違いです。
これと同じように、もし、売る側に説得されて買った場合だと、その商品・サービスに「悪いところはないか」と探そうとする気持ちが多少は働きます。その悪いところを探そうとしている人に提供するのだから、当然、満足度のハードルは高くなります。