なぜかと言うと、やり方を知っていて「根気強さ」さえあれば、できるからです。例えば、住んでいる街に危ない交差点があるとします。ミラーをつければ安全を確保できると思った時にどうするか。多くの人は、どこに相談をしたらいいのかわからないので、結局何も言わずじまいになってしまう。

しかし、区議へ「あの交差点は危ない」と連絡をして「この件を区議会で質問してください」「然るべき部署に対して交渉してください」と言うことができれば、その区議が解決へ向けて動いていくわけです。

問題発見から解決に向けてのフローがわかっていれば、あとは実行するだけなので、簡単ですが、大半の人がフローを知らないから進まない。このフローを知ることができれば、さまざまな人が政策起業家になれると思います。

「制度や政策というのは、意外と変えることができるんだ」という認知転換をした上で、知識を身につけてもらえれば、政策起業家は必ず増やせます。

馬田:それはやはり、駒崎さんの30代での経験からそう実感されているのですか。

駒崎:そうですね。

馬田:「おうち保育園」(待機児童対象の保育園。詳細は前編参照)が小規模認可保育園になるなど、実際に制度を変えてこられた経験から、パターンも分かっていて、それを伝えていらっしゃるわけですね。政策起業道場は現在1期目だと思いますが、何人が参加しているのでしょうか。

駒崎:5人です。

馬田:道場に通う前と後では、やはり大きく違ってくるものですか。

駒崎:どうでしょう。まだ始まったばかりで、結果を語るには早すぎるのですが、政策起業道場にはそうそうたるメンバーが揃っています。例えば元横須賀市長であったり、有名なNPOですが、かものはしプロジェクトの代表だったり。みなさん一様に「どのようにすれば法律を変えられるかを、学ぶ機会がなかった」とおっしゃいます。

自治体の区議長さんであれば、私よりも行政に詳しいと思っていましたが、地方自治体と国では違っていて、国にどう意見を届けるかについては知見が乏しい。これには、なるほどなと思わされました。

地方行政というのは、国のメニューを利用して、市や区を運営することに特化しているので、その大元となる国のメニューを変えたり新たに作ったりということとは、全然違うのです。これは、自分が政策起業道場を通じて得た発見ですね。

馬田:その中で、先ほどお話が出た「交差点が危ないから直してください」という話は、民主主義の自治の観点から、誰もが知っておくべき知識だと思いますが、そこが欠けているのは、なぜなのでしょうか。