こうした市場におけるマクロトレンドと政策がぶつかった結果、どのような環境変化が生じるのかが気になる点です。ポジティブな面として、今までの環境下では資金が巡らなかったようなスタートアップに対する資金流入が進む一方で、副作用的にはお金に絡む不祥事が増えるだろうと思います。

2023年に注目する・盛り上がると考える領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。

・Climate Tech
Web3がオンライン上で完結した領域として独自進化を遂げる一方で、対極的にオフラインでのより差し迫った課題解決を試みるスタートアップがこの先増えてくるのではないでしょうか。その最たるものがClimate Techです。スタートアップに対する注目が増し、人材流入が進むことも、こうしたシリアスな領域の盛り上がりの後押しになるはずです。

・未上場セカンダリーマーケット
満期を迎えるファンドが増える中、株価低迷が持続する環境下、既存ファンド投資先の受け皿がより求められるようになるでしょう。

2023年に注目すべきスタートアップについて教えてください。投資先の場合は、その点を明示してください。

世界を舞台に活躍する日本人起業家のスタートアップが2023年どのように成長するのか、注目しています。
 
・ポケトーク
AI通訳機「POCKETALK」を展開する会社。長かったコロナ禍もようやく収束に向かいつつありますが、世界中で人々の行き来が活発化することにより、ますます利用シーンが拡大するものと思っています。当初は上場企業であるソースネクストの製品として展開されていましたが、同社の創業者である松田社長がスピンアウトして事業に邁進してらっしゃるという点で、スピンアウトから生まれたスタートアップ、シリアルアントレプレナーといった側面でも注目しています。
 
・Oishii Farm
世界最大のいちごの植物工場を展開するスタートアップ。日本発の施設園芸の技術を活かしながら、アメリカを舞台に事業を展開しているという点で、今後の技術系スタートアップの好事例になり得るのではないでしょうか。
 
・Robust Intelligence
AI特有の脆弱性にまつわる課題を解決するスタートアップ。設立からまだ3年半ですが、既にPayPalやExpedia、アメリカ国防総省などの名だたる企業、公的機関をクライアントに持ち、Sequoia CapitalやTiger Globalからも資金を調達しています。ハーバード大学在学中に同社を創業した大柴行人さんは、日本で生まれ育ち、大学からアメリカに留学した人物であり、世界を舞台に活躍する若者のロールモデルになり得るのではないかと期待しています。