また、早いタイミングで海外展開を模索、本格化させるスタートアップも出てきており、海外で戦うためのプロダクト・組織づくりの知見がエコシステムに蓄積し始め、スタートアップ企業のさらなる飛躍の可能性を感じています。

2022年に注目した・盛り上がったと感じる領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。

近年、SDGsが個人、法人の中で強く意識され、価値観や意思決定のための「モノサシ」の変化が起こっています。2022年は特に労働環境整備と脱炭素関連については明確に予算がつき、企業の行動、お金の流れが大きく変わってきていると感じています。

労働環境の整備の文脈で、時間外労働の上限規制や労働力不足の課題から、デジタルツールを活用した業務効率化への関心は今後も高まり続けることが間違いないことは皆さんも感じられているかと思います。それに加えて、従業員の身体的・精神的な健康管理に各企業が、力を入れ始めたことが2022年の1つの変化ではないかと考えています。

健康管理を「人事の一施策」ではなく、「不健康な状態による損失の可視化と、利益の最大化」という経営課題として捉えはじめている企業も多く、弊社でも2022年には日本、北米、アジアそれぞれの地域で従業員のメンタルヘルスケアをはじめとした健康管理支援のスタートアップに投資するなど、全世界的な変化を強く感じています。

脱炭素関連については、統合報告書でのTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に関する開示割合は大幅に増加。サプライチェーンにおける炭素量測定はもはや必須の企業活動になりました。北米、欧州でカーボン・クレジットの取引所が大型の資金調達を行い、国内でも経済産業省がカーボン・クレジット市場の実証を開始するなど、炭素排出の費用(課税等)、炭素削減分に利益(排出権等)という新しい経済価値が明確に意識されはじめ、今後の飛躍が期待されます。

また再生可能エネルギーが中心となる時代を見越して、エネルギーの需給調整ビジネスに参入するスタートアップもいくつか見られたのが、2022年の大きな変化の一つではないかと考えています。

上記をふまえ、キーワードとしては下記に注目しています。

・メンタルヘルスケア/健康経営
リモートワークが定着化し、コミュニケーション量が減る傾向にある中で課題感が鮮明になり、日本に限らず全世界的に注目されており、各国で大型の資金調達が起こっている領域です。

・製造業・建設業向けDX
時間外労働規制と労働力不足の深刻化もあいまって、今までデジタル化が遅れていた領域の急速なニーズの高まりを背景に、複数のスタートアップが出てきているという認識です。