SHIFTグループは「合衆国」。カルチャーではなく、上位概念を共有する

及川:グロース・キャピタルを経てSHIFTグループに加わることで、よりSHIFTカラーの強い関係性へと移行するわけですね。

丹下:事業面に関してはそうです。一方で、カルチャー面に関しては、もともとSHIFTカラーに染めるつもりはないですね。というか、カルチャーって基本的に融合できないものだと思っています。

及川:そもそもカルチャーフィットは求めていない、と。

丹下:グループ各社がそれぞれのドメインで、独自のフィロソフィーを軸にまとまっているほうがむしろいいと思っています。「1法人1人格」って言っているんですが、そのほうがグループ内で転籍して、キャリアの幅を広げたい社員にとっても、自分がどこに行くのがベストかわかりやすいでしょう。

例えて言うと、グループ各社は自治州で、SHIFTグループは合衆国。そうすると、アメリカ合衆国にとっての「正義」「自由」のように、グループとしての上位概念が必要になる。SHIFTの場合は、そこで「多重下請け構造をなくす」という想いを共有しているかたちですね。

及川:「1法人1人格」ということは、グループ内でドメインが重ならないようにM&Aしているわけですね。

M&Aクラウド代表取締役CEOの及川厚博氏
M&Aクラウド代表取締役CEOの及川厚博氏

丹下:だから、どこをM&Aするかはすごく大事です。M&Aの目的は基本「時間を買う」ことですが、それにプラスして「タレントを買う」というケースもありますよね。例えば、SHIFTにとってセキュリティ領域は知見もなかったし、そもそもセキュリティ関連のビジネスをやりたいと思うような原体験もなかった。M&Aしたからこそ、カバーできた領域だと思っています。

及川:M&A先の選定に関して、PMI中の会社からよく聞く悩みとして「クロスセルがうまくいかず、思ったようなシナジーが得られていない」という話があります。クロスセルに関しても、SHIFTさんはうまく進められている印象がありますが、悩んでいる会社へのアドバイスがあれば。

丹下:これは僕も他社から相談を受けることがあるんですが……クロスセルを狙うんだったら、ユーザーを人レベルで共有しているサービス同士じゃないと、まずうまくいかないですよね。顧客側の担当者が一緒じゃないと。

例えば自分たちの祖業が広告ビジネスで、主なユーザーはCMO(Chief Marketing Officer)だとしたら、CMOが他に求めているサービスは何か。SHIFTの場合はCIO(Chief Information Officer)になりますけど、そこを起点に考えていくのが一番の近道。先方の担当部門が変われば、それだけこっちの営業コストもかかるわけですから。