上述したようにスピークでは最初に事例を聞いて、それをその都度実際に声に出して話すことで記憶に入れる。新しい語彙やフレーズを「早く定着させるための機能」も取り入れており、復習機能などを通じて「同じ表現を繰り替えすることで、長期で記憶して、通常会話でも使えるような状態を作る」(ヤン氏)仕組みを作り込んできた。
「AIが相手なら恥ずかしくない」
「使いやすさ」という観点でもアプリで完結することのメリットはいくつかある。
たとえば場所や時間の融通が効きやすい。対人型の英会話レッスンであれば講師のスケジュールが決まっているので、そこに合わせて予約をする必要がある。レッスンの枠も25分や50分など時間が決まっているケースが多い。
一方でスピークの場合は自分が希望する時間にいつでも学習を進められる。途中で中断して後から再開することもできるので、数分単位のスキマ時間でも学習可能だ。
また「AIが相手なので(自分が英語を満足に話せないことから)恥ずかしいと感じることや、気を使ってしまうことがなくなる」点は多くのユーザーから挙げられるポイントだという。
「(対人型のレッスンの場合)そこまで英語ができないと思って話すことが恥ずかしいと感じてしまったり、それが原因でスピーキング量がどうしても少なくなってしまう。そこに悩みを抱えている人は多いです。(スピークのようなアプローチは)日本人の性格にも適したかたちでスピーキングができると思っています」(ヤン氏)
AI相手でもスムーズに学習ができる仕組みとして、スピークでは音声認識技術を始めとした研究開発を続けてきた。まさにこの点こそ、OpenAIとの連携が活きてくる部分だ。
OpenAIとのパートナーシップにより、同社の最新技術をいち早く自社のプロダクトに組み込める。実際にOpenAIからの資金調達は資金の獲得よりも「パートナーシップを通じて得られる付加価値」(ヤン氏)が目的だったという。
「たとえばAI講師においては(AIとユーザーの)自然な会話をサポートするために多くの部分で『GPT-3』を活用していますし、音声認識技術に関しても独自開発した技術に加えて(OpenAIが手がける音声認識モデルの)Whisperを使っています。実はパートナーシップのきっかけの1つはWhisperの技術です。アクセントの癖の強い人のスピーキングをしっかり理解する上で、部分的にWhisperを活用しています」
「もちろん独自で蓄積しているデータを基にモデルを作り込んでいますが、OpenAIが保有しているデータの規模はかなり大きい。彼らの技術を借りることにより、プロダクトの開発スピードが早くなっている側面はあります」(ヤン氏)