実際にある大手タクシー会社ではIVR機能を取り入れることで、1ケ月で約70時間分の工数削減を実現。この時間を新規の受注に使えるようになった結果、配車率の向上と売上の拡大につながった。
また現場のドライバーと連携して「将来の空車を予測する」機能も取り入れた。
通常、配車システム上ですべての車両が「実車」になっていれば、オペレーターは依頼を断らざるを得ない。もし仮に「実車中ではあるものの、1分後には空車になる」ことが事前にわかれば、顧客に対して「少しお待ちいただければ手配ができます、といったコミュニケーションができるようになる」(近藤氏)。
これらの機能の一部は有料のオプション機能という位置付けだが、事業規模に関わらず複数の顧客で活用が進み始めているそうだ。
“地方のタクシー会社生まれ”の配車システム、現在は400社が活用
もともと電脳交通のタクシー配車システムは“現場のニーズ”から生まれた。
近藤氏は、2009年に祖父が経営していた徳島県のタクシー会社・吉野川タクシーに入社。2012年には同社の代表取締役に就任し、廃業寸前のところから会社を建て直してきた。
吉野川タクシー在籍中には近藤氏自身もタクシードライバーや配車業務を経験。現場で感じた課題を解決するために立ち上げた新会社が、電脳交通だ。
Saas型のタクシー配車システムも、最初は吉野川タクシー内でプロトタイプの開発に取り組み、自分たちで試しながら検証を重ねた。そこから少しずつ規模を広げ、タクシー事業者の声を参考に機能を拡充してきた。
近藤氏によるとタクシー業界向けの配車システムは従来から存在するオンプレミス型の製品が主流だ。それに対して電脳交通のサービスはSaaS型のため、顧客は常に最新の技術を使うことができる。実際に同社では年に1000回前後のアップデートを実施しており、それが顧客から支持を集める1つの要因だという。
料金も1台あたり月額3000円台からと安価なため、導入のハードルが低い。全国に約6000社ある法人タクシー事業者のうち、70%程度は保有台数10台以下の小規模事業者だと言われている。そういった企業にとっても導入しやすい点も特徴だ。
当初は小規模のタクシー事業者が中心だったが、この1〜2年ほどで機能面の拡充も進み、大手の顧客も増えてきた。
当然ながら事業規模によってもタクシー会社が求めるものは異なる。地方の小規模なタクシー会社であれば1日の注文数は100件程度だが、大手になると1万件を超える。そこでシステム側が自動で配車を行う「自動配車機能」など“大手特有”のニーズが生まれるという。