それから2年が経った現在、ポート数は約3000カ所を突破。また地方自治体とも連携することで、提供エリアも東京・大阪・京都・横浜・宇都宮・神戸の6都市へと拡大している。岡井氏によれば、「新事業特例制度下での電動キックボード走行実績のうち、Luupが9割以上のシェアを占めている」という。
電動キックボードに対する関心が高まり始めたのは2018年ごろ。海外でLimeやBirdといったプレーヤーが電動キックボードのシェアリングサービスを開始したことがきっかけとなっている。海外での盛り上がりから数年遅れるかたちで、Luupは日本で同様のサービスを開始したが、こだわったのは「日本ならではのビジネスモデルの追求」だったという。
「海外プレーヤーは“乗り捨て”を軸にしたサービスを展開しています。そのため、とにかく提供台数を増やすことを指標にし、各社がしのぎを削っている。このモデルは終わりがなく、ひたすら競争し続けなければならない。また、ギグワーカーに報酬を支払うかたちで街中で乗り捨てられている機体を回収するため、コストがかかってしまいます。この報酬に関しても“他社より多めに支払う”というような競争になるので、各社はコストばかりがかかってしまい、結果的に全然収益が生み出せないモデルになっているんです」
「電動キックボードの台数を増やし続けたら、利益が出にくくなることは誰しも分かると思います。1機体のコストを何カ月で回収できるかが事業上は重要になるわけですから。でも海外は競争に勝たないといけないので、台数を増やし続けるしかない。このビジネスモデルは継続性がないことから、海外プレーヤーの評価額も軒並み落ちています」(岡井氏)
また、とにかく機体を増やし続けたことで、路上への放置や不法投棄が目立つようになった。海外では市が主導するかたちでポートを設置したものの、そこにおさまりきらず、電動キックボードの路上への放置や不法投棄は“社会問題”と化している。
こうした問題や安全性への不安から、先日パリで市が主導する電動キックボードのプログラムの継続に関する住民投票が行われ、否決されたことは記憶に新しい。パリ市と契約を結んでいる米Lime、蘭dott、独tierは運営が打ち切りとなる。一方で、個人所有の電動キックボードに関しては禁止の対象外となっている。
海外勢に遅れるかたちで電動キックボード市場に参入したからこそ、「海外勢のビジネスモデルの問題点はわかっていた」(岡井氏)と主張する。そのため、Luupは海外のような“乗り捨てモデル”ではなく、不動産とコミュニケーションをとり建物の一部をポートにするかたちでサービスを展開してきた。「サービスの立ち上がりは大変なのですが、一定以上のポート数を設置できれば、ネットワーク効果が働きやすいモデルになっています」(岡井氏)。