十河:比較的近いのは、2021年にIPOをして、2022年にプライム市場に市場変更されたAIマーケティングのAppierさんです。成長率や利益の規模感、海外で創業しており海外売上比率が高い点なども似ているんですよ。主幹事会社や投資家との間でもよく話題に上がりました。

ただ、Appierさんはマーケティング領域を深堀りされているのに対し、当社はクライアントであるブランドのバリューチェーン全般にカバー範囲を広げてきています。そこは大きく違う点です。

及川:各事業の立ち上げ順は、当初から計画されていたのでしょうか。

十河:最初に取り組んだマーケティング領域には私自身、前職(サイバーエージェントグループのマイクロアド)で培った知見があったことに加えて、インターネットビジネスの中でもTAM(Total Addressable Market:獲得可能性のある、最大の市場規模)の大きい領域といえば、やはりマーケティングとECです。そこでクライアントとなるブランド群との関係値を築き、東南アジアにおいて先行者利益を取りに行く戦略でした。

ちょうどインフルエンサーマーケティングが東南アジアで盛り上がり始めていた一方、マッチングプラットフォームはまだ存在しなかった時期でもありました。その段階で他社に先駆けてプラットフォームをつくるのは、インターネットビジネスの歴史から見ても正しい選択だなと。

クライアント基盤を一定築いた後に、サービスを強化する意味もあり、コンテンツマネタイズに注力してきました。ここも伸びしろの大きい領域です。東南アジアは経済全般、成長著しい地域ですが、当社はその中でも成長市場に網を張っていて、ビジネス手法としては正攻法だと考えたことを取ってきたかたちです。

創業時からベンチマークしていたのがテンセントやアリババで、当社もアジア地域で圧倒的ナンバーワンになることをイメージしつつ、布石を打ってきました。

 

VC担当者が後押し、創業1年後の資金調達後にM&Aを実施

及川:M&Aに関しても、きっと早くからシミュレーションをされていたのかと思います。「この事業領域の会社を買いたい」とか「グループイン後はこんな機能を担ってもらいたい」といった考えはあったのでしょうか。

十河:M&A想定というより、経営者としてのトレーニングのような感覚で、シミュレーションは常にしていますね。「自分がこの会社の社長だったら、こういう一手を打つ」とか「このビジネスモデルは絶対にグローバル市場に通用するから、自分だったら今のタイミングで海外進出する」とか。そういうことを考えるのが癖になっているんです。