その意味で、優秀な経営者のいる会社、かつ事業領域が近くて確実にシナジーの見込める会社をM&Aするというのは、当社がアジアで成長していくうえで、非常に有効な手法です。

グループ経営にもいろいろなスタイルがあると思いますが、当社の場合はコーポレートやバックエンドの機能含め、段階的にではありますが100%統合していくのが基本スタンスです。最終的にはカルチャーも近づけていきたいと考えています。ですから、先方の経営者にはAnyMindの経営にも一定のコミットをしていただきたい。そこは検討過程でもかなりディスカッションをしますし、M&A後の役割や契約書面にも必ず反映しています。

及川:かなりアクハイヤー(人材獲得を目的としたM&Aのこと)の側面が強いわけですね。

十河:例えば、タイのM&A先のトップとナンバーツーの人材がAnyMindグループの経営陣に入っていますし、香港のM&A先の社長も今、香港含めた中華圏全体の責任者になっています。国内でもM&AでジョインしたフォーエムやGROVE、ENGAWAの社長たちには、日本事業の経営の一部を担っていただいています。

こうしたスタイルを取ることで、AnyMindがグループとしてパワーアップすると同時に、仲間に加わる各社にとっても、社長自身がPMIの推進者になりAnyMindのアセットを自社の成長のためにフル活用できる体制が整います。結局、各社が何を期待してAnyMindにグループインするかというと、一番はそこだと思うんですよ。

AnyMindにとってM&A先は、その地域のそのドメインで圧倒的ナンバーワンを獲得していくためのパートナー。M&Aの目的としては非常にシンプルです。ですから、ジョインしてくれた経営者には、「事業成長のために必要なものは全力で提供します。何でも言ってください」といつも伝えています。

及川:M&A先のグロースにフォーカスする考え方は、以前お話を伺ったSHIFTさんとも通じるものがあります。

アクハイヤー色の強いAnyMindさんの場合、いかに相性のよい経営人材を獲得できるかがM&Aの成否を左右することになるかと思います。先方との相性を見極めるコツは何でしょう?

十河:やはりコミュニケーションを積み重ね、人となりを知ることです。特に海外の経営者の場合、文化的な違いもありますし、互いの考え方を理解できるまでに時間がかかることもあります。成約前に5回くらい飲みに行くこともあります。