前述のとおり創業当時にベンチマークしていたのがテンセントやアリババでしたから、M&Aにはいずれ取り組んでいく必要があるとは当初から考えていました。GoogleやMETAにしてもそうですが、海外のメガベンチャーはM&Aをどんどん仕掛け、成長手段として使いこなしています。
そんなイメージを早くから持ちつつも、具体的にM&Aを考え始めたタイミングは、創業1年後の2017年に実施した資金調達の後からです。調達した16億円を成長投資としてどう使っていくか、その選択肢の1つとしてM&Aにも取り組みたいと考えました。
及川:調達した資金をM&Aに使っていくことは、VCなど投資家との出資交渉段階から握っていたのですか? 投資家とのコンセンサスをどのように取るかは、未上場スタートアップのM&Aにおいて課題になりやすい部分です。
十河:それが当社の場合、VCの担当者がむしろ全面的にバックアップしてくださったんです。ご自身が今までいろいろな会社を見てきた経験から、「M&A活用は企業がスピード成長を遂げるためのカギ」という考えをお持ちの方でした。
及川:なかなかないケースですね。
十河:最初のM&Aを実施した頃は、当社にはまだCFOもおらず、M&Aのケイパビリティもなかった中で、VCの担当者がCFO的な役割を果たしてくださいました。私と二人三脚でディールを進め、最終的なバリュエーション検討に関しても、かなりアドバイスしていただきました。
及川:なるほど、本当に相性がよかったんですね。M&Aに対する理解の深いキャピタリストと出会ったことが、AnyMindさんが未上場スタートアップのうちから“M&A巧者”になった大きなきっかけだったわけですね。
M&Aで経営人材獲得し、アジア圏でのナンバーワンを目指す
及川:最初にウェブメディア運営支援のフォーエムをM&Aした後、インフルエンサーマーケティングやD2C支援の領域を中心に、国内外で7件のM&Aを手掛けられました。一見、自社でも立ち上げられそうな事業を持つ企業が多いようにも思えますが、どんな戦略でM&Aを進めてこられたのでしょうか。
十河:当社にとって、特に重要なポイントになっているのは、経営人材の獲得です。今、アジア13カ国・地域で事業展開していますが、それぞれの地域で、経営人材をオーガニックで育成や採用するのはなかなか大変です。