現在準備中の企業も含めてStailerの顧客は12社。直近3カ月で注文がつく店舗数は400店を超える。

スーパーやドラッグストアでStailerの活用が広がっている背景には何があるのか。10X代表取締役社長の矢本真丈氏に聞いた。

採用難で現場の生産性向上が急務に

「スーパーやドラッグストアの経営が難しくなってきている」。矢本氏は小売企業の現状について、そのように話す。特に「人手不足」や「採用難」といった課題は、地方の企業でより深刻だ。

ただでさえ少々高齢化が進み働き手の数が足りないことに加え、過酷なイメージもあってか、今までと同じ時給で募集をしてもなかなか人手を確保できない。10Xでもそんな声を聞くことが増えたという。

「いかに現場の生産性を上げていけるか。それと並行してお客様との接点を増やしたり、顧客体験を良くしたりできるか。これらの問題を同時に解ける選択肢として、Stailerに関心を持っていただくことが増えてきています」(矢本氏)

Stailerのネットスーパーアプリのイメージ
Stailerのネットスーパーアプリのイメージ

現場スタッフが使う商品ピッキングやパッキング用の業務アプリ、在庫データを管理する商品マスタ、注文状況を可視化する管理システム、消費者が触れるモバイルアプリ。Stailerではこのような仕組みを包括的に提供している。

10Xが培ってきた知見は、新たな機能としてStailerに落とし込まれることで、さまざまな企業が使えるようになる。伴走支援にも力を入れており、各顧客に合わせて事業成長に必要なノウハウを直接提供している。

通常ルートよりも大幅にショートカット

Stailerの利用料金は初期費用と定額の月額利用料、顧客の売り上げに連動した報酬(レベニューシェア)から構成されるため、顧客が儲かるほど10Xの売り上げも増える構造だ。そのためお互いがネットスーパー事業の成功という共通の目標に向けて、プロジェクトを推進しやすい。

「全国チェーンのコンビニなどとは違い、スーパーやドラッグストアは特定の地域に根ざして展開しているところも多いです。そのため“自社流”のやり方以外をほとんど知らず、ずっと手探りで事業をやってきたというケースも珍しくありません。我々の価値は、色々なパートナー企業と探索を続けてきた中で得られた知見や成功事例をもとに、顧客に伴走できること。通常のルートよりも大幅にショートカットできる点に、期待していただいていると考えています」

「この構造はStailerを立ち上げた時から変わりませんが、3年間の間で『ゼロから立ち上げたネットスーパーが(限界利益ベースで)黒字化を達成した』といった実例ができてきました。当初と比べても、提供できる価値のレベルが1段2段上がってきています」(矢本氏)