CSV(価値共創)を通じたKIRINブランド強化の実現

江部:異なる会社が力を結集し、同じ方向を向いていくためには、まずはKIRINブランドの目指すものを共有していくことが重要だと思います。
KIRINは何のために世の中に存在するのか。まず私たちの存在意義として、「新しい飲料文化をお客様と共に創り、人と社会に、もっと元気と潤いをひろげていく」というメッセージを掲げました。

 ここにも込められている思いであり、私たちの本部名であるCSV(=Creating Shared Value:共有価値の創造)については、KIRINが今後、新しい価値を生み出し、世の中で支持されていくための、重要な鍵になると考えています。

小西:キリングループでは、長年のサッカー支援の取り組みや、震災被災地の産業復興を支援する「絆プロジェクト」をはじめ、地道なCSR活動もさまざまな取り組みを行ってきています。これらの中でも、チームや仲間、地域やコミュニティの「人のつながり」を非常に大切にしていますね。

江部氏は、「異なる会社が力を結集し、同じ方向を向いていくためには、まずはKIRINブランドの目指すものを共有していくことが重要」と語る。

江部:もともとビールが、人のコミュニケーションやつながりを媒介する「社交飲料」としての性格をもっていたこともあるかも知れません。お客様はもちろん、酒屋さんや飲食店など、ローカルな人や食とのつながりもKIRINが昔から培ってきたことでしょうか。

 キリングループのサッカー支援は、1978年から行ってきていますが、スポーツを通じた生活の豊かさや楽しさの提供と、日本代表チームの応援などを通じて、社会(日本)を元気にしていくことで、KIRINブランドの価値向上につなげていこうという考え方で一貫して展開しています。

 キリングループとしての社会価値創造の取り組みは他にも多岐に渡りますが、たとえばメルシャンのワイン事業は、地域の土地や人との関わりを重視してきました。長野県上田市の遊休荒廃農地を付加価値の高いワイン畑として再生させた、マリコヴィンヤードの取り組みなどは、事業と地域産業の活性化が結びついた例の一つでしょう。

小西:また、商品ブランドの話になりますが、「世界のKitchenから」なども、ローカルな食や家庭の味の再提案など、社会的な価値やストーリーが組み込まれた、今日的な意味でのブランドのような気がします。

江部:そうかもしれませんね。「世界のKitchenから」は、女性が本当に飲みたい飲料を作りたいという思いで開発をスタートしました。世界の家庭のお母さんの知恵をヒントに、日本向けに「ひとてま」かけて驚くようなおいしさを提案していくことで、7年目を迎えました。