国内の飲料・酒類市場の環境が大きく変化する中、2013年1月に、キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンを束ね、国内綜合飲料事業を統括する会社であるキリンが発足した。
電通のブランド戦略コンサルタントの小西圭介氏は、同社のCSV本部(CSV=Creating Shared Value:共有価値の創造)が推進する、顧客や社会との価値の「共創」を目指した新しいブランド戦略の取り組みに注目する。
対談の第4回は、キリン株式会社CSV本部ブランド戦略部 部長の江部るみ子氏をお招きして、ブランドをお客様とともに育てる意味、そして新体制での「ひとつのKIRIN」としてのブランド戦略について聞く。
「ひとつのKIRIN」:日本の綜合飲料事業ブランドへ
小西:キリンはこの1月から、キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンを束ねるキリン株式会社を設立しました。これは飲料から酒類までを合わせた「ひとつのKIRIN」を目指したものだそうですが、まずその意図についてお聞かせください。
キリン株式会社・CSV本部 ブランド戦略部 部長。1985年キリンビール入社後、マーケティング部にて、日本初のペットボトル入り紅茶飲料「午後の紅茶」の開発に携わる。キリン・トロピカーナ株式会社を経て、キリンビール株式会社マーケティング部の商品開発研究所にて、「白麒麟」「極生」などの開発、また「のどごし<生>」などの開発をリードする。キリンビバレッジ株式会社マーケティング部・部長を経て2013年1月より現職。
江部:もちろん、以前からキリングループとして連携した活動は行ってきましたが、ビールやソフトドリンク、ワインなどそれぞれのカテゴリの価値やマーケティング手法も異なっていたため、国内の飲料事業は基本的に3つの会社がそれぞれ、独自に展開してきました。
ところが、グループ全体でこれだけの技術や商品、お客さま接点を持ちながら、KIRINがバラバラに見えてその全体の力を発揮できていないのではないか、という課題を認識するようになってきました。
もう一つ、お客様の飲料やお酒に関する嗜好が変化する中で、従来のカテゴリの価値の垣根がどんどん低くなっていって、飲料全体を見据えた新しい提案が必要になってきたことが挙げられます。
小西:若い人を中心に伸びているノンアルコール、チューハイやカクテルなどの低アルコール飲料なども、確かに清涼飲料的な選ばれ方になっていますよね。なぜこうした傾向が進んでいるのでしょうか。
江部:大きなトレンドとしては、やはりアルコール離れが進んでいるからかも知れません。昔ならお酒を飲んでいる場面で飲まなくなった。家で何かを飲む時にも、仕事やネットなどをしながら、ということが多く、酔いたくない、酔えないシーンが多くなっている傾向が見られます。