江部:「午後の紅茶」は私が新入社員のときに関わった商品です。当時は缶入りの甘い紅茶が中心だった中、本格リーフでつくったストレートティーを、クリアな液色を見せられるよう、初めてペットボトルで提案したところ大きな支持を得ました。作り方も、工場に大きなティーポットがあるのと変わりません。
私が発売後に関わった期間は短かったのですが、高校生などが自然発生的に、「午後ティー」「午後茶」と愛称で呼び出したときはびっくりしました。商品がお客様のものとして、本当の意味で「ブランド」になったことを実感しました。
その後、500mlサイズのペットボトル化を清涼飲料で先駆けて発売したことで、お客様が鞄に入れて持ち歩くようになり、生活における飲料の飲み方が変わるのに合わせて大きく成長しました。
小西:最近は、エスプレッソティーやおいしい無糖の食提案など、さらに紅茶カテゴリを超えたさまざまな提案でブランド価値を拡げていますね。
江部:紅茶を飲む人は多いのですが、緑茶やコーヒーのように毎日飲む人が少なかったので、頻度を増やしてもらえるよう、食生活に入り込んでいく戦略を取りました。現在は「おにぎり公式飲料」などの提案を行っていますが、ブランドの売上も過去最高記録を更新しつづけています。
「のどごし<生>」の新しいコミュニケーション戦略
小西:もう一つ、2005年に発売された新ジャンルの「のどごし<生>」も、KIRINの屋台骨を支えるブランドにまで成長しました。
江部:もともと発泡酒の「麒麟淡麗<生>」が多くの支持をいただいており、その上で新ジャンルを出すべきかという議論もあった中でスタートしました。淡麗はKIRINらしい発泡酒として、高い品質感を提案していましたが、リサーチをしてみると新ジャンルは発泡酒とはお客様の捉え方が違うことがわかってきました。このカテゴリのお客様は、もっと価格に見合った価値を求めていたのです。
お客様のこのジャンルの欲求を探索していくと、「ジョッキの生」を飲む感覚というのが出てきて、しかもこの価値は特定のメーカーやブランドのイメージが希薄でした。大衆的な、気軽にガッと飲めるジョッキの生のような感覚。これが「のどごし<生>」のコンセプトとなりました。結果として大きなヒットを生み出し、その後他社が似たようなパッケージを意識するまでになりました。
小西:そして「のどごし<生>」は、今年からリニューアルとともに、お客様を主語にしたまったく新しいコミュニケーション戦略(のどごし夢のドリーム)に大きく転換しました。お客様の夢の実現を応援することで、感動を生み出し、リアルなユーザーやファンの方々の結びつきを強化する、まさに「動詞のブランディング」の取り組みですね。
さて、商品ブランドのエピソードは興味が尽きませんが、江部さんがブランド戦略部で現在取り組まれている、KIRINブランド再強化の取り組みについて、お考えを教えてください。